5f904439c4fc4800194bb5ce_e
image by:The Netherlands Cancer Institute

 遺伝子にメスを入れ、マイクロチップを脳に埋め込むほどにまで技術が発達した現在であっても、人体の神秘はまだまだ完全には解き明かされていない。

 先月『Radiotherapy and Oncology』(9月22日)に掲載された研究よると、人間の喉の奥からこれまで知られていなかった唾液腺が偶然発見されたという。
スポンサードリンク

前立腺がんの検査で偶然発見


 その「未知の臓器」は、オランダがん研究所のグループが「前立腺特異的膜抗原(PSMA) PET-CT」という最新の検査機器で前立腺がんの患者を検査していたときに偶然見つかった。

 PSMA PET-CTは放射性グルコースを注入することで、これまでは見つけられなかった腫瘍を検出することができる。ところが、その検査では鼻咽頭の後ろに誰も気がつかなかった1対の器官が浮かび上がったのだ。

 「人間には大きな唾液腺が3つありますが、その位置とは違うところにあります」と、オランダがん研究所のウーター・フォーヘル氏は解説する。

 「我々の知るかぎり、鼻咽頭にある唾液腺や粘液腺といえば、粘膜に1000個ほど均等に散らばっているごく小さなものであるはずでした。ですから、これを見つけたときはとにかく驚きました。」

5f904439c4fc4800194bb5ce_e
image by:Valstar et al., Radiotherapy and Oncology, 2020

それは第四の唾液腺だった


 消化に不可欠な唾液は、「耳下腺」「顎下腺「舌下腺」という左右で対になった3つの大きな唾液腺から主に分泌されている。また、これにくわえて、口腔や消化管には目に見えないほど小さな唾液腺が1000個ほど散らばっている。

 鼻の後ろ、口蓋の上のあたりで見つかった唾液腺は、PSMA PET-CT検査を受けた100人全員で検出されており、2体(男女)の検体の解剖によっても、縦長の器官と鼻咽頭壁へむけて開いた管が確認された。

 また腺組織が含まれていることも確認されており、どうやら4つ目の主要な唾液腺であると考えられるようだ。研究の発表時点では、耳管隆起という軟骨の上にあることから「耳管腺(tubarial glands)」という名称が提案されている。

3_e5
image by:Valstar et al., Radiotherapy and Oncology, 2020

放射線治療では注意が必要


 これまで発見されなかったのは、頭蓋骨の下の簡単には覗けない部位に隠れていることが原因であるらしい。

 内視鏡を入れたときに管の開口部に気づく可能性はあるそうだが、まさか唾液腺だとは思われず、これまで見過ごされてきたようだ。

 なお唾液腺は放射線に非常に弱いために、今後、頭部の放射線治療を行う際には、これを避けるよう注意が必要になるだろうとのこと。

 実際、過去の放射線治療のデータからは、耳管腺がある部位に放射線を当てると、合併症が重くなる傾向が見て取れるそうだ。


Cancer researchers discover new salivary gland
The tubarial salivary glands: A potential new organ at risk for radiotherapy - Radiotherapy and Oncology
https://www.thegreenjournal.com/article/S0167-8140(20)30809-4/fulltext
References:livescience / sciencealertなど/ written by hiroching / edited by parumo

あわせて読みたい
人体の不思議。失っても生きていける7つの臓器


人間の内臓組織からプラスチック微粒子を発見、分析したすべての組織サンプルから検出される(米研究)


突然変異遺伝子の研究で将来叶うかもしれない10の素晴らしい能力


手術後の人体と糖分が大好き。病院で繁殖する恐怖の細菌が発見される(英研究)


がん細胞だけを殺す免疫細胞が発見される。万能ながん治療の開発につながると期待(英研究)

この記事に関連するキーワード

キーワードから記事を探す

この記事が気に入ったら
いいね!しよう
カラパイアの最新記事をお届けします
この記事をシェア :    

人気記事

最新週間ランキング

1位
7389 points
洪水で水浸りの状態でじっと耐えていた犬が海兵隊員に救助され、メンバーとして迎え入れられる(メキシコ)

洪水で水浸りの状態でじっと耐えていた犬が海兵隊員に救助され、メンバーとして迎え入れられる(メキシコ)

2020年11月18日
1387222227
2位
6266 points
アルコールを急速に体内から抜く呼吸装置が開発される(カナダ研究)

アルコールを急速に体内から抜く呼吸装置が開発される(カナダ研究)

2020年11月16日
3位
4739 points
地球最強生物クマムシの新種、紫外線を青い蛍光に変え無害化する能力を持っていた(インド研究)

地球最強生物クマムシの新種、紫外線を青い蛍光に変え無害化する能力を持っていた(インド研究)

2020年11月17日
9743722637
4位
4211 points
3日間行方をくらましていた猫が、借金を背負って帰ってきた!(タイ)

3日間行方をくらましていた猫が、借金を背負って帰ってきた!(タイ)

2020年11月16日
8503320239
5位
3916 points
不機嫌顔の保護猫は、甘えん坊のデレデレ猫だった。飼い主となった女性に心を開くと片時も離れなくなる

不機嫌顔の保護猫は、甘えん坊のデレデレ猫だった。飼い主となった女性に心を開くと片時も離れなくなる

2020年11月20日
773816320
もっと読む
スポンサードリンク

Facebook

コメント

1

1. 匿名処理班

  • 2020年10月23日 20:42
  • ID:.Mshclka0 #

「前立腺癌の検査をしていたらー、なんと鼻の奥に唾液腺を見つけてしまったー。どうしよー」
「銭形め、わざとらしい真似を ! 」

2

2. 匿名処理班

  • 2020年10月23日 20:52
  • ID:gvV5kWDN0 #

全部見つけられたかな?

3

3. 匿名処理班

  • 2020年10月23日 21:03
  • ID:1HNLDUhL0 #

何で前立腺癌で唾液腺?と思っていたけど、腫瘍の転移とか調べていたのかな?

4

4. 匿名処理班

  • 2020年10月23日 21:18
  • ID:6qpwZWTn0 #

当方まじめに歯医者。
食事(ただしうまいやつに限る)だと昔から鼻腔からなんか出て困ってた
(まぁ鼻水とおもってたんだか)
今回唾液腺の一種と分かってある意味すごい納得しています

5

5. 匿名処理班

  • 2020年10月23日 21:48
  • ID:5PqYSv6Y0 #

ほんとうに"見逃されてきた"のか?

実は最近になってそういうニンゲンが増えてきた、というだけかもしれんぞよ?

年齢ごとに調べたらある一定年齢以下の人間にしか見つからないかもしれない

6

6. 匿名処理班

  • 2020年10月23日 21:57
  • ID:eYSPWjb80 #

それで、第三の目の方は、どこにあるんでしょうか(笑)

7

7. 匿名処理班

  • 2020年10月23日 22:40
  • ID:O5zVuw900 #

>>4
え? (*_*) それじゃラーメンを食べた時のアレって……コレでしょうか?

8

8. 匿名処理班

  • 2020年10月23日 22:50
  • ID:.Mshclka0 #

後鼻漏の原因ってコレかね。教えて医学の人

9

9. 匿名処理班

  • 2020年10月23日 22:52
  • ID:hsu4kVy50 #

えー!! すごい、そこそこの大きさはある感じなのに、
まだ人体でそんな未発見の部位があったんだ!

10

10. 匿名処理班

  • 2020年10月23日 23:03
  • ID:HhPCrkpG0 #

ほあー!
何千万と医学論文が出るような時代に
今の今まで知られていない器官があったなんて…
人間のパーツにはもう全部名前がついてるもんだと思ってたわ

11

11. 匿名処理班

  • 2020年10月23日 23:17
  • ID:OBIds0oS0 #

神秘。俺にも隠れた能力があるかもしれん。

12

12. 匿名処理班

  • 2020年10月24日 00:50
  • ID:roBuC2C10 #

喉っていうから喉仏あたりにあったのかと思ったら
ほぼ鼻腔ですねこれは
なんか他にも知られてない器官ありそうだなってなって
探し始める研究者けっこういそう

13

13. 匿名処理班

  • 2020年10月24日 01:30
  • ID:gSwvBl9J0 #

>>5
100人検査して全員に見つかったって書いてあるやろ
例外が1人でもいればともかく今のところ誰にでもあるならをれは普通にあるって事やろ

14

14. 匿名処理班

  • 2020年10月24日 02:31
  • ID:N7XejHiF0 #

100年前ならともかく、人間の体なんて生きた状態で血管も含めて全て三次元的に計測できる今の時代に見落としたあったのは驚き。
素人からすれば臓器なんて全部発見済みだと思ってた

15

15. 匿名処理班

  • 2020年10月24日 02:42
  • ID:HO6Iv9YV0 #

>>6
今自分の体見てみたらありました!

16

16. 匿名処理班

  • 2020年10月24日 03:51
  • ID:ae3PhpPf0 #

未発見の器官なんてあるはずがない、っていうバイアスもこれまで見つからなかった原因かもね

17

17. 匿名処理班

  • 2020年10月24日 05:51
  • ID:uDgBVlYM0 #

>>6
松果体っちゅーのが退化したそれだって聞いた事あるな。

18

18. 匿名処理班

  • 2020年10月24日 06:42
  • ID:qYXYwOjb0 #

数日前にヤフーニュースで見た時は、未知の臓器発見ってあったけど唾液腺の仲間?だったとは!

19

19. 匿名処理班

  • 2020年10月24日 06:47
  • ID:DYm2Aaod0 #

飯を食った時、あるいは食った後に、鼻水が出る理由がコレか ?

20

20.

  • 2020年10月24日 08:48
  • ID:Gcss8Y7f0 #
21

21. 匿名処理班

  • 2020年10月24日 08:49
  • ID:Gcss8Y7f0 #

※13
全世界でその100人にしかないのかもよ

22

22. 匿名処理班

  • 2020年10月24日 08:50
  • ID:DCgNGiWm0 #

なんか頭痛いのが治るとき
鼻の奥で何か鼻水と違うのが出てくる感触があってそれが出ると治るのね
これなのかな

23

23. 匿名処理班

  • 2020年10月24日 09:07
  • ID:SsGcd5Xi0 #

※13
「たまたま選んだ100人が全員、珍しく第4の唾液腺がある人たちだった」という可能性も…

…すいません、言ってみただけです。

24

24. 匿名処理班

  • 2020年10月24日 09:08
  • ID:GEvQ7xY50 #

>>13
100人検査して全員に見つかったって書いてあるのはちゃんと読んだ上で>>5のコメントをしたんだよ。それに記事にも『…と考えられるようだ』と書かれているように、普通に誰にでもあると断定はされていないんだ。

元論文には100人の内訳が出ていて、2017年以降の前立腺癌もしくは尿道癌にかかってPSMA PET/CT検査を受けた患者、連続して100名の検査画像をNCI(Netherland Cancer Institute)から提供してもらって分析したみたいだ。年齢は53歳から84歳、男性99人女性1人ということらしい。

全人類を調べない限り認めないなんて言うつもりはないけど、この研究の調査対象にはやはり偏りがあるし、なにより元論文の著者たちも"100人例外なくあるから普通にある"とは断言してないんだ。それよりも、ここに唾液腺があることを考慮して放射線治療のやり方を変えれば今後の患者のQOLを向上できるかもしれない、という話をしているみたいだよ。日本にも米国にも癌センターはあって過去の検査画像のストックはあるだろうし、本当に"誰にでもある第4の唾液腺"と認められるかどうかはこれからじゃないかと思うんだ。それに、人間はみんな平均身長や目の色だって地域や年代によって変わってきたというし、たとえば中世の人には殆ど発達してなかった唾液腺という可能性だってあるかもしれなくて、もしそうなら面白いかもなと思ったんだよ。

25

25. 匿名処理班

  • 2020年10月24日 10:26
  • ID:mnaa36O50 #

>>14
ちょっと驚きだけど、MRI検査でもCT検査にも、出てこない器官だったんだって。
放射性の造影剤検査して、初めて見て「なんだコレは??」となったらしい。
おそらくは今までも同様の検査で見えてたろうけど、興味持たれなかったんでしょうね。

26

26. 匿名処理班

  • 2020年10月24日 19:48
  • ID:LuDDHOyV0 #

机に突っ伏して寝てるとたまにサラサラの鼻水が出てくることがあったがこれが原因だろうか

27

27. 匿名処理班

  • 2020年10月24日 22:08
  • ID:YCvwpWQu0 #

耳から水が出る人ってこれと関係あるのかね

28

28. 匿名処理班

  • 2020年10月24日 23:22
  • ID:utC8QGOC0 #

※13 人種による違いがあるかもしれない。ないかもしれないけど。

29

29. 匿名処理班

  • 2020年10月26日 03:40
  • ID:c5Eng2bc0 #

人間は脳が巨大化して頭が90度折れ曲がったから
一番奥の唾液腺が変なところに入り込んじゃってるんだな

30

30. 匿名処理班

  • 2020年10月26日 12:28
  • ID:1pKFebZC0 #

放射性グルコースなわけねーだろ。
PSMA-PETってちゃんと書いているだろ。
PSMAリガンドに放射性物質をくっつけて検出したから見つかったわけだろ?
そこが新しいんだから、そこを書け!
日本だけ5年以上遅れてて、待ってる人がごまんといるんだぜ?

論文には関係ないが、仮に従来のFDGの事をいいたいなら
放射性グルコースアナログだろ。
論文読んでから記事書け。
耳管腺の訳もいまいちだし。センスがない。。

31

31. 匿名処理班

  • 2020年10月31日 14:33
  • ID:02tlYqsv0 #

>>7
それはラーメンの湯気だと思うけど…

32

32. 匿名処理班

  • 2020年11月01日 11:02
  • ID:PNhrzmLb0 #

※3
PET-CTはトレーサーという放射性物質を含んだ薬剤を投与して、
CT画像に、PETで撮影した放射性物質の分布を重ね合わせて観察できる。
薬剤は、唾液腺、胆道、腸管、尿路なんかを経由して対外に排泄されるから、
PETを撮影した時に、こういう臓器には病気じゃないけど薬剤の信号がみえるものなの。

お名前
スポンサードリンク
記事検索
月別アーカイブ
スマートフォン版
スマートフォン版QRコード
「カラパイア」で検索!!
スポンサードリンク