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2000万年以上前の螺旋状の化石「悪魔のコルク抜き」の謎に迫る(アメリカ)

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Wikimedia Commons
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 アメリカ、ネブラスカ州ハリソンの町近くの瑪瑙(めのう)の化石層にある遺跡では、地面から螺旋(らせん)状に露出している奇妙な化石を見ることができる。

 これは、これまでに発見されたもっとも珍しい化石のひとつだろう。左巻きあるいは右巻きのきっちりした螺旋状になっている高さ2メートル超のこの構造物は、ダイモネリクス(daimonelix)と名付けられ、地元では「悪魔のコルク抜き」という名で知られている。

 螺旋の一番深いところからは、傾斜のついた上向きのトンネルが脇に広がっている。峡谷や絶壁の脇で、この螺旋を囲む軟岩が風化して露出したことで発見された。

 2000万年から2300万年前の中新世時代にさかのぼるハリソン層の細かい砂岩地帯で主に見られるものだが、これは一体何なのか?まさか古代には巨人がいてこのコルク抜きを使っていたとでもいうのか?

 その謎はこのようにして解明された。

古生物者により発見された奇妙な化石

 初めてこの化石を発見したのは、古生物学者であり地質学者のアーウィン・H・バーバー博士だ。「この形状は見事としか言いようがない。左右対称のつりあいは完璧で、わたしの理解をまるで超えた構造だ」と著書に書いている。

 バーバー博士は2300万年から258万年前の新第三紀にかさのぼる、ネブラスカ州産の哺乳類の化石コレクションの土台を築いた人物だ。

 彼がネブラスカ州西部を探索しているときに、この巨大な螺旋状構造物の化石サンプルを集め、1892年、ダイモネリクスと名づけた(ギリシャ語で「悪魔のコルク抜き」の意)。これらはこれまでの化石とはまるで違うもので、その正体は謎だった。

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National Museum of Natural History/wikimedia commons

植物?動物の巣穴?悪魔のコルク抜きの正体は?

 最初、巨大な淡水海綿の化石だろうと考えたバーバー博士は、のちにこれは植物のおそらく根の部分が枯死したものだと推測した。螺旋の内部から、植物の組織が見つかったからだ。

 1年後、伝説的なアメリカ人脊椎古生物学者のエドワード・ドリンカー・コープ博士が、バーバー博士の解釈に異議をとなえた。彼は、この螺旋化石は、大型齧歯類の巣穴の跡だと主張したのだ。

 同じ年、オーストラリアの古生物学者セオドア・フックス博士も、コープ博士と同じ結論に到達した。「この奇妙な化石は、中新世期の齧歯類、ホリネズミの地下の巣穴にすぎない」としている。

 しかし、バーバー博士はこうした反対意見を受け入れず、1894年にフックスの分析を批判する文章を発表した。

 ハリソン層の岩は湖の堆積物でできていて、フックスの言うホリネズミは、深い場所に取り残されただけで、そこで穴を掘って干し草の巣を作ったのだと主張した。(フックスはまわりの岩が湖の堆積物であるという説に疑いをもっていて、バーバー博士が発見した植物の残骸は穴を掘った生き物がためた干し草だと解釈した)

 同じ頃、アメリカ人古生物学者オラフ・ピーターソン博士は、「悪魔のコルク抜き」のサンプルを集めていて、その付近で古代のビーバー、パラエオカストルの骨がよく出てくることを発見した。パラエオカストルは、今日のオグロプレーリードッグよりも少し大きな齧歯類で、コープの説を裏づけることになった。

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Paleocastor Fossor / wikimedia commons

 しかし、バーバー博士は「悪魔のコルク抜き」は植物の化石だという自分の解釈を頑として曲げようとしなかった。

 齧歯類の巣穴派に対して、こう反論した。「これが本当にホリネズミの仕業なら、これほど正確な形状が連続する複雑な住居を作った生き物の才能をたたえる永久不滅の記念碑でも建てなくてはならない」

 フックス博士らは、穴の中の奇妙な溝を、掘った動物がつけた爪の跡だと解釈した。やがて、バーバー博士に教えを受けた元学生や、州立博物館の後継者C・バートランド・シュルツ博士などを含め、ほとんどの研究者が「悪魔のコルク抜き」は齧歯類の巣穴の化石だと考えるようになった。

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ついに決着。悪魔のコルク抜きは巣穴

 長い間、「悪魔のコルク抜き」の正体に関する調査が詳しく行われることはなく、問題は行き詰ったまま捨て置かれた。

 そこに、カンザス大学の哺乳類化石の専門家ラリー・マーティン博士が登場する。1970年代始め、マーティン博士と彼の学生デブ・ベネットが、現場やラボでこの「悪魔のコルク抜き」を徹底的に研究した。彼らの研究報告は1977年に発表され、この奇妙な螺旋状構造物の新たな全体像とその正体が公開された。

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Lucia RM Martino, NMNH

 マーティン博士らがこの研究にとりかかるまでに、地質学者たちはハリソン層が湖の堆積物でできているという説をずっと認めず、細かい粒子の堆積物が、現代のネブラスカ州西部とよく似た乾燥した気象条件の下、風によって少しずつ蓄積したものだと主張した。

 この堆積物が「悪魔のコルク抜き」だけでなく、たくさんの植物の根の化石や昆虫や小型哺乳類が作った巣穴も保存したのだという。

 マーティン博士とベネットは、絶滅したビーバー、パラエオカストルの門歯が、「悪魔のコルク抜き」の内部についていた溝の跡と完璧に一致したことを発見した。

 この歯の痕跡から、「悪魔のコルク抜き」の螺旋状の巣穴やトンネルは、おもにパラエオカストルが大きな平たい門歯を使って、左右に交互に掘って作り上げたものであることを確認した。

 彼らは爪の跡を残し、巣穴の脇や底に閉じこめられることもけっこうあった。最初の巣穴は、きつく巻かれたコイル状のまま下へと掘り進み、底に着くと30度の角度で斜め上へ掘り上げて、自分の居場所を作った。巣穴のこの部分は、4.5メートルほどにになることもあった。

 巣穴から見つかった若い個体の骨から、彼らはこの中に棲み、寝床用の植物を斜めの部分の部屋の隅にためたらしい。巣穴の入り口、つまりしっかり螺旋状になった上の部分は、湿度を保ち、巣穴の温度をコントロールするための巧みな方法だと現在では考えられている。

Untangling the Devil’s Corkscrew

 パラエオカストルのこの螺旋状巣穴の集落は、あちこちでたくさん見つかっており、それは現在のプレーリードッグの“タウン”と呼ばれるコミュニティとよく似ている。

 おもしろいことに、すでに絶滅したテンやイタチの仲間など、ほかの生き物がこの巣穴を訪ねることもあったようだ。パラエオカストルのエサが目当てだったのかもしれない。

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パラエオカストル Nobu Tamura/Wikimedia commons

巣穴にあった植物組織の謎

 では、バーバー博士が見つけた巣穴の中の植物組織はなんだったのだろう?

 この謎を解くために、マーティン博士とベネットは、「悪魔のコルク抜き」の岩場が、季節によっては乾燥した環境におかれることに気づいた。

 このような気候条件下では、水分が足りなくて植物が生き延びるのは厳しい。しかし、「悪魔のコルク抜き」のトンネル内には、かなりの水分や湿気があり、植物は内部の壁に急速に根をはることができる。

 事実、内部にはかなりの植物がはびこっていたため、パラエオカストルが中に入るためにときどき

植物を刈り取らなくてはならなかったはずだ。

 ハリソン層の岩には、近くの火山からの灰が大量に含まれていたため、土に浸みこんだ雨水はシリカで飽和状態になっていて、中に生えていた植物の根がシリカを吸収し、その根がはりめぐらされた壁が次第に石化。ついには巣穴全体がシリカ化した根でいっぱいになったのだ。

 謎は解決した。ネブラスカの荒れ地から見つかった奇妙な螺旋状化石から始まった謎は、古代の生態系と、棲んでいた生き物の生活の詳細をひもとくことになった。

 すべての化石がこうした可能性を秘めていて、古代の環境やかつて繁栄していた植物や生き物について新たな発見へとつながるヒントとなる。

 なお、バーバー博士については、最後の最後まで齧歯類の巣穴という説を否定し続けて鬼籍に入ったという。

References:smithsonianmag/ written by konohazuku / edited by parumo

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この記事へのコメント 30件

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  1. 私ゃてっきり、巨大な巻貝の内部に詰まった泥が化石化したのかと思った

    • +22
    1. ※1
      最低値でも6mもある直角貝カメロケラス(オウムガイやアンモナイトの近縁)、異常巻きアンモナイトのユーポストリコセラスがまさにコルク抜きみたいな螺旋だしね。地上の生物だとは思わなかった

      • +3
  2. 結論ありきで物事を語ってはいけない
    もしかしたら一種の自己催眠なのかもしれない

    • +13
  3. 地形の影響で変わった成長した棘皮動物じゃないかな

    • -1
  4. トンネルネットワークで広範囲を占有し集団で育児と防衛をこなすプレーリードッグは独居性のパラエオカストルを草原地帯から駆逐してしまったのかも

    • +2
  5. > 大きな平たい門歯を使って、左右に交互に掘って作り上げたものである

    螺旋は左に右に交互に掘るものじゃなくて、右下なら右下へ常に一定の角度で掘るものだろう。
    たまたまなのか、画像に2・3写ってるのは全て右ネジだな。

    • -2
    1. >>5
      別に交互でもおかしくなくない?
      たとえば人間が螺旋階段を歩く時、右足左足を交互に出すじゃないか、それと同じようなものだ。要は動かし方だよ。

      • +4
    2. ※5
      思うにそういう意味じゃなくて、掘り進む動作が首を左右に降って行く感じだったのではなかろうか。ノミ跡みたいに残ってる歯の跡からそれが分かったということで。

      • +3
  6. どこの業界にも自分の考えを頑として変えず、他人の意見を雑音にしか思わない人がいるもんだ。最早妄執とも思える。

    • +22
    1. ※6
      学者なんだものそりゃそうよ
      自分の説が否定されたら大恥、権威も何もなくなるから必死にもなるのさ

      • +1
      1. >>25
        影響力のある権威が亡くなった途端、学説が一気に塗り直されたりするのよね

        • +5
  7. 730年マフィアの一人の先祖みたいな名前がw

    • 評価
  8. 生き物の行動は驚異的な現象を起こすっていう分かり易い一例

    ここ大好き
    >根がはりめぐらされた壁が次第に石化。ついには巣穴全体がシリカ化した根でいっぱいになったのだ

    • +6
  9. 何をどう言っても「もやつき」ってのは消えないな
    誰かタイムマシンを開発して下さいな

    • +1
  10. >バーバー博士

    個人的には親しみを込めて、ビーバー博士と呼びたい

    • 評価
  11. 古生物者により発見された奇妙な化石
    古生物者ってなんだと思ったが誤字ってますね

    • +1
  12. 巨人族のDNAか? っておもったんだけどなー
    一瞬だけど

    • +1
  13. 現代の動物で同じように巣穴をほる動物はいないのかね

    • +6
  14. 鉱夫系ゲームでらせんに掘ってたから私は信じる。

    • +2
  15. この話は、変な話とか奇妙な話みたいなのを集めた本では定番ネタだよね
    巨大なネジみたいな画像がキャッチーなんだと思う

    • +2
  16. ボケて!のお題に持ってこいな化石だなぁ。

    • +4
  17. ヤケに規則正しい物ってすぐ人工物に見えちゃって興味を引くね

    • +5
  18. >おもしろいことに、すでに絶滅したテンやイタチの仲間など、
    ほかの生き物がこの巣穴を訪ねることもあったようだ。
    パラエオカストルのエサが目当てだったのかもしれない。

    テンやイタチの仲間は肉食でなかったかい?雑食?

    • 評価
  19. こんな形の息子スティックしてる動物いたような・・・

    • +2

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