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アインシュタインは「宇宙定数」を人生最大の過ちであると後悔したが、それでも傑出したアイデアだった

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(著) (編集)

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Image by WILLGARD from Pixabay
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 1917年、一般相対性理論が発表されてまもなくのこと、アルベルト・アインシュタインは自身が考案した場の方程式――すなわち、時空の曲率を時空を移動する物質とエネルギーに関連づける一式の方程式に数学的なヒネリをくわえてみせた。

 当時の常識では、宇宙は不変だった。だからアインシュタインは、一般相対性理論のフレームワークの中でこの常識を通用させるために「宇宙定数」というものを挿入した。

 それから10年ほどが過ぎて、宇宙は不変ではないことがエドウィン・ハッブルによって証明されてしまった。不変どころか、宇宙は膨張していたのだ。

 このニュースを聞いたアインシュタインは、「人生最大の過ち」であるとして後悔したというエピソードは有名で、自ら考案した宇宙定数を否定した。

 だが、この話はここで終わらない。

宇宙定数の再導入

 1998年、宇宙はただ膨張しているだけでなく、加速しながら膨張していることが明らかになった。なんらかの未知の力が重力に打ち勝ち、銀河と銀河をますます速く遠ざけているのだ。

 この力は現在「ダークエネルギー」と呼ばれているが、その確かな性質は謎に包まれたままとなっている。

 皮肉にも、物理学者らは、この宇宙に存在するエネルギーの70%を占めるその力を説明するために、アインシュタインの場の方程式に宇宙定数を再導入しなければならなかった。

 この新しい宇宙定数はアインシュタインが考案した数値とは違うが、それでもなおアインシュタインが考案したものだ。

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Image by bluebudgie from Pixabay

一般相対性理論は間違っている?

 現在の宇宙の標準モデルでは、宇宙定数は1平方メートル当たり10-52と推定されている。

 きわめて小さな値に思えるかもしれないが、宇宙全体で見てみれば、宇宙の膨張を加速させるほどの影響力を持つ。

 この宇宙定数には、「真空エネルギー」や「ゼロ点エネルギー」という、空っぽの空間のエネルギー密度が包含されている。

 だが、その宇宙定数に対する寄与の度合いを計算しようとすると、10120(0が120個ならぶ)というとんでもない値になってしまい、控えめに言っても受け入れることはできない。

 これは一般相対性理論が間違っているということを意味するのかもしれないが、その可能性は相当に低い。なにせ一般相対性理論は、物理学史上もっとも試されてきたフレームワークなのだ。

 比較的最近では重力波が検出されたが、これもまた同理論がこれまでのところ重力を説明するにあたって最高の理論であることを示している。

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Image by Barbara A Lane from Pixabay

定数はもはや定数ではない

 ジュネーブ大学の理論物理学者ルーカス・ロンブライザー氏は、一般相対性理論の正しさを疑う代わりに、シンプルに新しい方程式をつけ加えることにした。

 そこではニュートンによって導入された「万有引力定数」が変化すると想定されている。そう、現代理論物理学では定数ですら定数ではないのだ。

 ロンブライザー氏による一般相対性理論の新バージョンにおいて、観測可能な宇宙の範囲内では万有引力定数は不変である。しかし、それを超えれば変化する。

 つまり、この理論では宇宙が複数あると想定されているのだ。我々はマルチユニバースに住んでおり、その中には、基本的な定数の値が我々の宇宙とは違うものであってもきちんと機能する宇宙がある。

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User:Coldcreation/wikimedia commons

観測結果に近い計算結果

 ロンブライザー氏は、宇宙にある全銀河・恒星・ダークマターの質量を考慮したときに彼のフレームワークが弾き出す宇宙定数の値は、観測によって合意されている宇宙定数の値と非常に近いことを発見した。

 注目すべきは、観測によって推定された宇宙に占めるダークエネルギーの割合が68.5%であるのに対して、彼のフレームワークから導かれる割合は74%であることだ。

 これは従来あった乖離に比べれば大きな改善である。

 残念ながら、『Physics Letters B』に掲載された彼の理論を実際に確かめることは、少なくとも今の時点ではできない。

 だが、それはそれとして、驚愕すべきことがほかにある。それはアインシュタインのアイデアは、人生最大の過ちとされるものであってすら傑出したものだったということだ。

References:A new equation may have finally solved Einstein’s ‘biggest blunder’/ written by hiroching / edited by parumo

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この記事へのコメント 29件

コメントを書く

  1. アインシュタインの脳の輪切りからdnaを抽出して
    猫に移植したら賢い猫になるのだろうか?

    • -6
    1. ※1
      その猫類たちがやがて人類に代わり地球を支配する

      20〷年猫の惑星

      • +2
      1. ※3
        すでに猫の惑星です(打首獄門同好会)

        • 評価
  2. 宇宙は四次元的にだか五次元的にだかループしていると何かの本で見た

    • 評価
  3. 10120じゃなくて10^120(10の120乗)って書かないと間違って伝わるでしょ
    記事を書く人自体が基本的な数学(というより算数)くらいは踏まえてくれないと・・・

    • +9
    1. >>6
      10^-120です。
      ただし、^はExcelの表記方法で数学の表記方法ではないですけど。

      • 評価
      1. ※21
        原文では10の120乗と書かれていますし、文脈でもそう読み取れますよ。
        それと^を使用したべき乗の表記法はexcel限定のものではなく更に昔から使用されています。

        • +1
  4. 最大の過ちだと思ったまま死んでしまうなんて無情だなぁ…

    • +2
    1. ※7
      アインシュタインの心の内までは知るすべもないけど、ある意味辻褄合わせ(彼が支持していた定常宇宙論を満たす)のために、悩んだ末に付け加えた宇宙項を、ハッブルの観測によって否定されたことで、「そっか、やっぱそうだよな!」と、かえって潔く撤回できたんじゃないかなと、なんとなく想像。

      • +4
    2. ※7
      いや過ちを知った時はたしか生きてた筈だよ。
      アインシュタインが相対性理論を考案した時、「あれれ?これだと宇宙が膨張してることになっちゃうなぁ」って思って定数を蛇足で付け足した。

      その後望遠鏡で確認後その定数を取り除いたってエピソードをたしかNHKかなんかのドキュメンタリーで見た記憶がある。

      • -1
  5. 100年前に自分の想像と手書き計算だけで作り上げたのに、100年掛けて数万人という天才といわれた物理・数学者たちがコンピューター駆使して計算しても、間違いを探しだすのに四苦八苦してる
    流石、高度に科学技術が発達した星から流れ着いた異星人(そこでは素人一般人の知識豊富レベル)が地球人のふりしてるとまで言われた男

    • +1
    1. ※8
      一般相対論の検証は、計算間違いがあるかどうかという話ではなく実験と整合するかどうかの問題なので、検証に四苦八苦しているからと言ってそれがアインシュタインの天才性を示すわけではないと思います。単純に一般相対論の効果は非常に小さいので検証しにくいというのが大きいかと。

      もちろん、リーマン幾何学を知らなかった状態からスタートして一般相対性理論をゼロから作り上げてしまうのは疑いようもない天才なのですが。

      • +2
  6. アインシュタイン程でなくていいからツヴァィシュタインかドライシュタイン位の理系脳が欲しかった

    • +1
  7. 手元にある「スカイウォッチング事典(94年版)」では、重力レンズ効果はまだ根拠の弱い仮説(アインシュタイン十字も未確認)、ダークマターは「こんな説もある」程度。宇宙項に関してはもっと古い版で「自身は失敗と言ったが、膨張する宇宙を説明する際に有効性が再注目」的な記載があった。科学の進歩の早さと、変わらないアインシュタインの偉大さに脱帽。

    • +3
  8. なに?複数の空間がオーバーラップしてんの?

    • 評価
  9. 何故導入したかは、1915年の発表されて間もなく実際に式を組んで解いた人によると「宇宙は安定しない」と言うことになり、定常宇宙論を基本としていたアインシュタインが宇宙項を導入、と言う流れだね。
    因みにシュバルツシルト半径でお馴染みのシュバルツシルトも光も脱出出来ない宇宙を想定して「面白いね、でも存在するとは思えないね」なんてアインシュタインの話がある。

    そしてブラックホールは実在した。
    本人が思っている以上に宇宙方程式は真理だった。

    • +4
  10. 相対性理論というのが「特別な座標系は存在しない」という理念のもとに構築された以上、「特別な時刻は存在しない」=「宇宙は不変である」という発想はある意味とても自然だし、宇宙項を付け加えてしまったのも仕方がないかなという気がする。

    • +1
  11. いや、アインシュタインが想定した宇宙ってのは定常宇宙あったので、この定数は元々宇宙の形を不変にするための定数だぞ?ダークマターやダークエネルギーを想定した定数とは本来意味合いが全然違う。そう言う意味では取り返しのつかない失敗としか言いようがない。

    で、人生最大の失敗ってのはジョージガモフが「アインシュタインが言ってた」って言ってただけで証拠はないんだけどな。

    • 評価
  12. アインシュタインだったか忘れたが「神は単純(シンプル)を好む」ってのが信念で元々宇宙定数みたいな任意でどうとでもなる数値を付け加えるのは嫌がってたとかなんとかうろ覚えしてる
    そしてその言葉を一番よく表してる数式が有名な質量とエネルギーの等価を現すE=mc^2だ
    今も物理学者は宇宙(の法則)をたった一つの数式で表現できることを夢見ている
    いつか手が届くと、いいね

    • +2
  13. 重力は、4次元空間にまで伝わると言われてるね。マルチバースが本当なら我々の住んでいる宇宙は、外の(高次元に浮かぶ)多宇宙から漏れてくる重力に引っ張られているかもしれない。それが宇宙を膨張させている原因かも、、

    • 評価
  14. 知ってた

    当時アンちゃんはどう計算しても合わないから
    苦肉の策で宇宙定数ってのを意味も解らず入れたんだ
    それを恥じていたけど
    それが、のちのダークエネルギーさ

    アンちゃん最高さ!

    • 評価
  15. 神はサイコロをふらないってのも間違いだった訳だし
    当時の科学力とアインシュタイン自身の考え方があやふやなモノを受け入れられなかったんだろう

    • 評価
  16. 多分、<sup>タグ使ってるんだろうけど、
    cssで表示を定義してないのではなかろか。

    • 評価

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