
Image by through-my-lens/iStock
友情、信頼関係、心の絆。人間同士で用いられる言葉だが、これらは何も人間だけのものではない。吸血コウモリ(チスイコウモリ)を観察している研究者によると、意外にも彼らにも固い絆が見られるのだそうだ。しかも彼らの友情は熱く、実験室で芽生えた友情が、野生に戻った後にも継続されているということが、今回の研究で明らかとなった。
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仲間と親密な関係を築くナミチスイコウモリ
仲間と交流し、友情で結ばれる動物として代表的なのは霊長類だが、吸血コウモリも友情にも似た協力関係を作り上げ、それは野生の中でも続く、と新しく発表された研究は報告している。中米から南米にかけて分布するナミチスイコウモリ(Desmodus rotundus)は、カミソリのような歯で動物に傷をつけ、そこから流れてきた血を飲むことから、俗に吸血コウモリと呼ばれている。
その不気味な習性とは裏腹に、飢えた仲間に血を分け与えたり、自分以外の子供にも乳を与えたりといった利他行動を見せたり、グルーミングしあう仲の良い個体がいたりと、高い社会性で知られている。

image by:Uwe Schmidt/wikimedia commons
コウモリの友情は本物なのかを確認する実験
アメリカ・オハイオ州立大学の研究グループによると、今回の研究の主な狙いは、飼育中に結ばれた友情が自然にかえった後も保たれるのかどうかを確かめることだった。つまり実験室の中で育まれた絆は本物なのか? それともそのとき都合が良かったから手を取り合っただけだったのか? ということだ。
前者ならば自然にかえった後も友情は続くだろうし、後者ならば自然にかえればそれは脆くも崩れ去り、他の仲間を探すことだろう。
研究では、野生のコウモリ同士の交流やネットワークを詳細に把握する必要があった。
そこで、電気エンジニアやコンピューターの専門家の協力をあおぎ、小型の新型センサーを開発。数秒毎にデータを記録できるが、コインよりも軽く、コウモリに取り付けても行動を邪魔しない優れものだ。
飼育時の観察からわかったのは、メスのチスイコウモリの場合、お互いにグルーミングしたり、餌を分けあったりといった行動が友情のサインであるということだった。
そこで、このふたつの行動を追跡することで、野生に放された後も友情が続いているのかどうか確認することにした。

image by:Simon Ripperger
友情は本物だった。野生に放たれた後も関係性を維持
チスイコウモリを自然に放した結果判明したのは、友情は本物だったということだ。どのコウモリも人間に飼育されている間に育んだ友情を、自然にかえった後も保ち続けたとのこと。しかし人間の場合と同じく、チスイコウモリ同士の協力関係は、社会的選好と外部環境の両方の結果として形成されるものであるらしい。
この結果は、パートナーに対する忠実さとその交換がコウモリの関係において一定の役割を果たしているという説に一致する、と研究者は報告している。
人間同士の関係性を理解する手がかり
チスイコウモリが一部の霊長類に見られる友情にも似た社会的絆を形成するという証拠はどんどん増えていますが、私たちの発見もそうしたもののひとつです。と研究著者のひとりであるジェラルド・カーター氏は述べている。
動物の関係を研究することで、安定した人間関係を理解するうえでの洞察を得ることができるでしょう
研究グループは今後、コウモリの個性が協力関係にどのように影響するのか、仲間を探すためにどのような行動をとっているのか、昼に巣で協力関係にあるパートナーと夜も狩に出かけるのか、といったことを調査する予定だそうだ。
この研究は『Current Biology』(10月31日付)に掲載された。
References:After release into wild, vampire bats keep 'friends' made in captivity - Neuroscience News/ written by hiroching / edited by parumo
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コメント
1. 匿名処理班
血を分け合てくれなかった相手には冷たいんだっけ
2. 匿名処理班
人間的な感覚を安易に他の動物に当てはめるのは危険
これで大抵失敗する
3. 匿名処理班
ナミチスイコウモリですら友情を育んでいるというのに、お前らときたら...
4. 匿名処理班
まさに「血の絆」!
5.
6. 匿名処理班
洞窟内での鳴き声による『会話』が人間みたいだって話題になってたよな
7. 匿名処理班
霊長類である人間の絆だの友情だのは結構脆かったりもするんだけどね…
ソースは俺 orz
8. 匿名処理班
コウモリは都合が悪くなったら裏切るってうそだったんだな
9. 匿名処理班
でもトイレで悪口言ってそう
10. 匿名処理班
そのへんんの野良猫でも仲の良い猫と悪い猫であれだけ差があるんだからな
11. 匿名処理班
肉親や夫婦恋愛関係より、親友との友情が一番な俺はチスイコウモリに近いのか
12. 匿名処理班
このコウモリ野郎っ‼って悪口じゃなかったんだね。
13. 匿名処理班
仁義なき戦いの梅宮辰夫と菅原文太かな
14. 匿名処理班
※2
安易に否定しすぎじゃないかい(´・ω・`)
15. 匿名処理班
※6
食べ物と寝場所の口論、「あいつだけモテて腹立つ」に「隣のコウモリが近すぎる」を最初に思い出した。
16. 匿名処理班
動物の利他行動の例で
昔からコウモリはよく出てくる
17. 匿名処理班
>>2
人間も動物の一種なんだよなぁ
社会性をもつ(と人間が判断する)動物に共通する事項があれば、それは人間にも当てはまる可能性は高い。それだけのことでしょ?
18. 匿名処理班
※3
うわ〜、グサッと来た、その言葉ものすごくグサッと来た、
グサッと来てダクダクッと来たよ、もう此れはいけませんな。
処で、其処の吸血蝙蝠のあんちゃん、今、グサッと来て血がダクダクッと出てるから舐めていかん?
19. 匿名処理班
血の絆
20. 匿名処理班
>>12
この豚とかいう悪口も豚と同じで体脂肪率が約4%と前向きに考えような
21. 匿名処理班
>>2
「メスのチスイコウモリの場合、お互いにグルーミングしたり、餌を分けあったりといった行動が友情のサインであるということだった」
これが互いに損得絡まない環境下で続くことを「友情」と定義化した上での実験なの。本文読んでないでしょ
そんなだからみんなに嫌われるんですよ
22. 匿名処理班
コウモリの背中かわいい
23. 匿名処理班
バットコミュニケーションか🦇🦇
24. 匿名処理班
同級生と連絡取り合ってない人間も居るというのに
25. 匿名処理班
>>21
理論と人格否定をごっちゃにするな。
26. 匿名処理班
集団でのヒエラルキー位置での、他個体との
互恵の多寡、も有るだろうね
27. 匿名処理班
>>2
それは人間と動物の関わりで当てはまる部分は多々あるがここでの話ではない もちろんその考え方はかなり大事な部分なのだがね
28. 匿名処理班
※1
チスイコウモリは満腹状態から飢死に至るまでの時間がごく短い
このように切迫した状況下で互恵的な関係を維持するためにはタダ乗りを許してはならない
タダ乗りが許されたらそれが最適な生存戦略になってしまうから、最終的には誰一人として他人を助けなくなるだろう
自分を助けてくれないと分かっている相手まで助けようとする「お人好し」は当人が真っ先に死ぬだけでなく、タダ乗り野郎を増長させることで集団にとっても害になる
故にそういう行動をとるチスイコウモリはまずいない