科学は身近な暮らしの中で応用されている。そのような日常生活に関わる科学を分かりやすく紹介しているのが、クリス・ウッドフォード氏である。彼の新書『アトムズ・アンダー・ザ・フロアボード(Atoms Under the Floorboards)』には、なぜ高層ビルは崩れないのか?という疑問からなぜラップトップで動画を見るとラップトップが熱くなるのか?という素朴な疑問に対する答えが書かれている。今回はそんなクリス氏の視点からみた科学の世界を紹介しよう。
1. 電気ドリルで家が火事になる?
電気ドリルは摩擦により熱を発生させる。摂氏1度の環境下で1kgの木を熱するには2000ジュール必要とする。一般的な電気ドリルが750ワットの電力を使うと想定した場合、750ジュールのエネルギーを与えると、摂氏20度の環境下で木の壁を燃やすのに数分とかからない計算になる。もちろんこれは理論上の話だが。
※1ジュール(J)は,1ニュートン(N)の力(102gの物体を支えるくらいの力)で、その力の向きにものを1m動かすのに必要なエネルギー
2. ポストイット(付箋)が簡単にはがれる理由
ポストイットの貼りつけ部分には、プラスチックの球状の粘着剤が施されている。ポストイットを貼り付けると、一部の球体(正式にはマイクロカプセルと呼ばれている)が被着体にくっつく仕組みになっており、簡単にはがすことができる。もう一度つっくけようとすると、使われてない球体が使われる。やがてすべてのカプセルが使われたり、汚れが付着するともうくっつかなくなる。
3. ガムが伸びる理由
昔のガムは、天然ゴムと言われる天然チクル(サボディラという巨木の樹液を煮込んだもの)を使用していた。しかし、チクルが手に入りずらくなった今では、安定供給でき、値段も安く、噛み心地の加工調整などもしやすい「酢酸ビニル樹脂(ポリ酢酸ビニル)」や「ポリイソブチレン」というものが使われている。これは、車のタイヤや市販接着剤の主成分としても使用されている。
4. オフィスビルは夜中になると少し高くなる
すべての従業員が帰った後、オフィスがたくさん入ったビルは少しだけ高くなるという。例えば、約400mの高層ビルで、5万人の体重がかかると(個人の体重は人間の平均とする)およそ1.5mmミリほど低くなる。
5. 靴磨きは道路の穴を埋めるようなもの
一般的な革靴は手入れをしないと小さな傷などで覆われ光を反射しなくなり、光沢がなくなる。そこで人々は革靴を磨くわけだが、この靴磨きワックスは道路補修工事と同じ要領だという。革靴にワックスをかけるときは、小さな割れ目を補修し、層を重ねていくわけだが、これは道路の穴を埋めた後に表面をならす道路工事と同じ理論である。表面を均一に整え、光の反射を良くしてくれる。それによりツヤツヤと輝いて見えるのである。
6. 70人いれば一般的な家を暖められる
小さな部屋に閉じ込められたことがある人なら分かるだろうが、人の体からは熱が発せられている。では、冬に一般的な家(電気ヒーター4台分を前提とする)を暖めるにはどのくらいの人数が必要になるのだろうか?答えは70人の人間が動き回っている状態か、140人が座っている状態である。この理論は、人間は通常100から200ワットの熱を発しているからである。
7. 同じ温度でも空気より水の方が冷たく感じる理由
水の方が空気より密度が高いので、同じ温度でも水の中にいるほうが体が冷えるのも25倍早い。水は少しの温度を上げるだけでも、多くの熱を必要とする。そして冷たい状態を維持するよりも、温かい状態の方が維持しやすい(温かいスープが長時間温かいのはこの理由である。そして海が陸よりも冷たいのも)。水は偉大な導体である。だから、体の熱を上げたかったり、下げたいときにとても役立つ。
8. 水で汚れが落ちるのは非対称分子のおかげ
水で汚れが落ちるは水の分子が三角形だからである。2つの水素原子と1つの酸素原子から成り立ち、それぞれの面でマグネットのように僅かに異なる帯電がある。水素原子は僅かに正電荷で、酸素原子は僅かに負電荷だ。これにより水は他の分子にくっつきやすい特性を持っている。汚れを落とすとき、水の分子が汚れに付着し、表面が何であれ引きはがしてくれるというわけだ。水の表面張力が高いのもこれが理由である(表面張力とは、表面をできるだけ小さくしようとする性質のこと)。9. ミキサーの空回りを防ぐには乱流撹拌
ミキサーを使っている時にカッターだけが空回りしてしまい、中に入れた物が撹拌されないことがある。これは、ミキサーー内にある中身がすべて同じ速度で回り流層を作り出しているからである。流層とは、すべての液体の層が同じ方向に流れ、流線上を運動している流れのことだ。ミキサーにある「プラス機能」は乱流を生み出すため、材料が側面にはりつくことなく真ん中に落ち、スムーズにブレンドができるようになる。
10. 赤ちゃんの体は成人より多くの水分を含んでいる
人間の体はほとんどが水分でできており、水分の量は成人だと体重の約60パーセント、新生児は体重の80パーセントを占めている。しかし、1歳を迎えるころには数値は急激に落ち65パーセントになるという。
11. ガラスが壊れやすい理由
金属などの固い物体と比べガラスは非結晶でできているため、原子がランダムに配列されており、エネルギーを吸収したり散財することができない。そして、原子もガラスの構造を保つため自らの力で素早く再配列することができない。そのため、衝撃が加わると簡単に壊れ、粉々になる。
12. カロリーの計算方法
食品に表示されているカロリーはその食品が含んでいる熱量で計算されており、熱量を計算するためにカロリーメーターと呼ばれるものが使用されている。
ボンブ熱量計(カロリーメーター)という機器のなかに、熱量を計りたい食品(乾燥させてある)と酸素を入れ、電熱線に電気を通して熱して燃やし、容器内の温度の上昇を測定する。それを熱量に換算することで、カロリー数が測定できるのだ(ちなみに、1calは水1gの温度を1度上げるのに必要なエネルギーである)。
[食物の熱量]=[食物を空気中で燃やして発生した熱量]−[同量の食物を食べて出た排泄物を燃やして発生した熱量]via:mentalfloss// translated melondeau / edited by parumo
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コメント
1. 匿名処理班
ビルの高さの件、特に真夏の日中に照らされて鉄骨が伸びて高くなるのと、夜間荷重がなくなり伸びるのと、どっちの方が伸びるんだろ。
かなりマジに知りたい。
2. 匿名処理班
ミキサーのは結局どうすりゃ良いの?
3. 匿名処理班
2はポストイットが何度も貼れる理由を説明してはいるが、簡単にはがれる理由は説明していない件w まあ単に接着力がそんなに強くないってだけの話だと思うけど。
4. 匿名処理班
70人のやつは、北海道や北極圏でも通用するのだろうか・・・
まぁなんにせよ、知らない人70人に温めてもらうよりは、好きな人と一緒に添い寝する方が身も心も絶対にあったかいといえる
5. 匿名処理班
ロシアではウォッカ1本あれば十分
家を暖める必要がない
6. 匿名処理班
(ちなみに、1kcalは水1gの温度を1度上げるのに必要なエネルギーである)。
1calじゃね?
7. 匿名処理班
※4
ロマンチストだな
8. 匿名処理班
[食物の熱量]=[食物を空気中で燃やして発生した熱量]−[同量の食物を食べて出た排泄物を燃やして発生した熱量]ってことは、この差の熱量が体内に移動したってこと?体内でも燃やしてるのけ?どういう理屈?説明できる人いる?
9. 匿名処理班
※3
ノリが球体(粒立っている)ってことで分かるよね?
塗ってある面積のわりにくっついてる部分が少ない。
しかも高さが均一ではない。
10. 匿名処理班
※1
人の荷重が無くなって伸びる量と
日中から気温が下がって縮む量が混ざって
これもうわかんねぇな。
11. 匿名処理班
3の画像は全部ガムなの…?
12. 匿名処理班
※1
Wikipediaの熱膨張率で調べると、鉄やコンクリートの膨張率は
1度ごとに12×10^(-6)なので、
400mのビルだと、1度高ければ4.8mm伸びる。
外壁で考えると重量の分を超えそうだけど、
ビル内部の構造材の温度がどれくらい上下するかよくわからない。
案外一定かもしれない。
13. 匿名処理班
※9
その差の熱量を生む物質が体内に取り込まれてると言う意味です
物質を熱量に変えているのは細胞内のミトコンドリア
14. 匿名処理班
タイヤ食ってるおまえら
15. 匿名処理班
10は紛らわしいな
比率の話なのに
16. 匿名処理班
トイレが近くなる年頃になると
更に体の水分が占める割合は減ってるかもしれない
17. 匿名処理班
※15
ご意見ありがとうございます。私が理解できなかったのは食品に火をつけて燃やした熱量と生体内で化学的?に得られた熱量を横並びに比較しているように捕らえたためだと思います。ミトコンドリアでの燃焼について調べてみます、自分と違った視点をいただき目の前が少し広がった気がしました。
18. 匿名処理班
※15
ミトコンドリアはATPを生み出してるだけ
それを利用して筋肉だとか全ての細胞が物理的に動いたときにあらゆる分子間で働く摩擦熱が動物の発する熱の全て
カロリーはあくまで記事にあるような方法を定義して、その基準において食べ物同士を比較する基準に過ぎず人体が発する熱量との因果関係はない
栄養分野でカロリーが基準に使われるのは食べ物に含まれるあらゆる成分についてその生理学的な動態を記述なんてしてらんないから、蓋然的に用いてるだけで根本的には間違っているというか、人体の熱量とカロリーの熱量とはまったく関係ないものなんよ
19. 匿名処理班
3の画像ってゴムじゃないっすかね…
20. 匿名処理班
動いてる人と座ってる人が半々くらいなら、およそ50人で電気ヒーター1台分ってことかね
じゃあ73億人で1億4600万台分のヒーターつけっぱなしってことだね
21. 匿名処理班
※6
1cal は 4.2J (ジュール)くらい。
1W(ワット)は毎秒 1J のお仕事をしてる。
100W の熱量を発している人は毎秒 100J の熱量を発生している→毎時 360000J =毎時 360kJ →一日あたり 24 x360kJ =8640kJ 最初の式でカロリーに戻すと 2057kcal 毎日これくらいの食事が必要ってのは、ここからくるわけです
22. 匿名処理班
ガムの原料はわかったけどガムが伸びる理由は??
23. 匿名処理班
駅前広場の立ってる銅像も深夜に座って・・・
24. 匿名処理班
ガラスだけでなく、強度を目いっぱい高めたアルミ合金なども曲がらずにわれる。
多少は曲がるがその後ぽっきり。
25. 匿名処理班
それでラップトップが熱くなる理由が書かれていないのですが・・・
26. 匿名処理班
※24
「ポリなんとか」という名前の物質は、分子が何千何万とつながった長い鎖がたくさん集まってさらに絡まったような構造をとっています。で、鎖同士が所々結合しているので、この絡まりを引っ張っても絡まりが完全にほどけることはなく、びろーんと伸びることになります。これが、おおざっぱですがガムが伸びる要因です。詳しく知りたければ、「高分子 伸び」とかで調べてみるといいかもしれないです。
27. 匿名処理班
※3 ポストイットの接着剤は接着剤としては失敗作だったものを別の使い道を見つけた商品
なんです
28. 匿名処理班
>ガラスが壊れやすい理由
そう言えば数ヶ月前に、日本人の研究者が鋼鉄並に壊れにくい
透明ガラスを開発したとか報じられていたな
量産化される様になれば、ノーベル賞ものかな?
29. 匿名処理班
コメント欄がすごくためになる。ありがたい。
30. 匿名処理班
摩擦の熱というのは凄いものですよね、鉄の棒を機械で削るという作業をしたことがありますが熱湯と同じくらいの温度にたやすくなりオイルで摩擦軽減と冷却するのが当たり前ですからね
金属ですら削ってて煙出るし木材を日曜大工で穴あけてて焦げ跡つくとかしょっちゅうだから気を付けないと
31. 匿名処理班
誤字が多くて「パルモさん疲れてるのかしら?」と思いながら読んでいた……
32. 匿名処理班
ビルの話
夜中というから、太陽の引力で潮の満ち引きのような理屈で伸縮するのかと思いきや、
人の体重でしたか。