credit:Wiley-VCH GmbH, Weinheim
一軒家やら人工肉やら、様々なものを作れる3Dプリンターは、生体組織の領域にも生かされている。これまで、角膜や血管、人工皮膚などを作ることには成功してきた。一方で骨はただの生体組織ではなく、そこに無機物が混ざっているために、印刷の難易度が増す。
今回、オーストラリアの研究グループは、周囲の細胞を取り込むセラミックインクを使うことで、その難題に挑んだ。いずれは人体に直接3Dプリントして骨折を治せるようにもなるかもしれないそうだ。
液体で満たされたところで固まるインク
欠けた骨を修復するには、自分の骨を移植する「自家骨移植」という治療法がある。しかしこの治療は感染のリスクが高いうえに、修復部位が大きすぎる場合には使えないという欠点があった。ニューサウスウェールズ大学のグループが開発したのは、無害かつ人体のような液体で満たされた場所にも印刷可能で、しかも骨の構造と似たような形状に固まってくれる3Dプリンター用のインクだ。
インクはリン酸カルシウムをベースにしたもので、常温ではペースト状になる。しかしゼラチンなどの溶液に注入されると化学反応が起こり、まるで本物の骨組織のような多孔質のナノ結晶構造に固まってくれる。
Scientists use a novel ink to 3D print ‘bone’ with living cells
人工骨内で細胞が増殖
『Advanced Functional Materials』(1月20日付)に掲載された論文では、造骨細胞をはじめとする人間の細胞が混ぜられたゼラチン内に3Dプリントされた、小さな骨構造が紹介されている。37度に温められたゼラチンに注入されたインクは、周囲の細胞を組み込みながら骨の構造に固まる。それから数週間すると、組み込まれた細胞が付着して、増殖したとのことだ。
印刷には細い針のような専用設計のノズルを使う。だがそれ以外の部分は市販の3Dプリンターなので、たとえば実際の治療にあたっては、ポータブルタイプの3Dプリンターを手術室に持ち込むといったこともできるそうだ。
credit:Wiley-VCH GmbH, Weinheim
医療や研究などさまざまな応用可能性
3Dプリントされた骨は、骨折やがんの治療だけでなく、骨の病気の研究や薬のスクリーニングなど、さまざまな用途が考えられるという。研究グループは目下、より大きくプリントする方法を開発している。さらに、実際に傷を治すことができるかどうか確かめるために、動物実験も開始したそうだ。
いずれは医師と協力して、当局への許可申請手続きを進め、医療の現場で使えるようにしたいとのことだ。
References:spectrum / 3dprint/ written by hiroching / edited by parumo
あわせて読みたい
人間から培養したミニ肝臓をラットに移植することに成功(米研究)
血管を備えた「生きた皮膚」を3Dプリンターで作成することに成功(米研究)
火傷を負った皮膚に直接新しい皮膚をプリント。画期的な3Dプリンターデバイスが開発される(カナダ研究)
拒絶反応のない移植用臓器へ向けて。3Dプリンターで作られた血管ネットワークで脈打つ臓器(米研究)
不思議の国のアリスの世界かな?キノコにバクテリアを3Dプリンターで印刷することで発電キノコが誕生(米研究)
コメント
1. 匿名処理班
顔の形を変えるとか脚を伸ばすとかやり放題では ?
2. 匿名処理班
粉砕骨折の治癒が早くなりそうなのはいいねぇ。
3. 匿名処理班
美容整形業界で発展していきそう。
4. 匿名処理班
草薙少佐「男はみんなナイスバディなってみたいぞ。」
5. 匿名処理班
歯科治療に応用出来ないのが残念だよなぁ
6. 匿名処理班
これで助かる人が増えると素敵だねぇ
7.
8. 匿名処理班
がん治療で変形した骨を切除し人工チタン修復したけど
もう少し早く確立していれば自分の骨でできたかもね
もっとも腕や足のような比較的楽で軽い部分でないし
この技術が確立しても使用に耐えなかったかもしれん
9. 匿名処理班
半月板とかはどうなんやろ
あれ再生出来たらすごいけど
10. 匿名処理班
※1
やり放題って、結局は顔面を切って開いて頭蓋骨をガリガリ加工するとか大手術やで?
ちなみに脚を外科的に伸ばすのは実用化されてます。脚の骨を一旦切断してボルトでつないで一定期間ごとにネジで伸ばしていくみたいな。(古い方法かもしんないけど)
11. 匿名処理班
馬の骨折にも使えないかな?
12. 匿名処理班
これの治療法で助かる人は数え切れないほどいるし、実際私がこの技術を利用できる患者の立場にいたら飛びつく、わかる、
でもひとつだけ忘れちゃいけないのは実験動物のエグさだなと気づかされた
きっと今当たり前のように享受してる技術たちの中にも、悲惨を繰り返した結果生まれたものが多々あるのだろう
昔の日本人が鎮魂碑を建てまくったのもなんかわかるわ、信仰上でも現行法でも裁かれないけど罪深く感じる行為はあるし、それに対して謝ったり感謝してるってことを形にして贖罪したかったんだろな
13. 匿名処理班
これはアイデアがすごいね
リスクと負担を軽減できるいい事尽くめではないか
14.
15. 匿名処理班
膝に矢を受けてしまった人も復帰できるな!
16. 匿名処理班
>>9
膝の骨だっけ?昔は怪我したら取り除いちゃって運動が出来なくなった人もいたが
17. 匿名処理班
>>10
ジャック乙
18. 匿名処理班
これ、歯科には使えないかな。そしたら年取っても安心なんだけどなー。
19. 匿名処理班
高級SUVで事故ったゴルファーも復帰できるな!
20. 匿名処理班
そしたらリブロースとかも作れそうだし、
未来はダシも動物性じゃなく、
人工骨で取れるようになるかな?
21. 匿名処理班
※11
馬は常に4本脚で自重を支えていないと生きていけないのです。
昔テンポイントという馬に骨折の治療をしましたが予後はとても悲惨なものでした。
興味があれば、ネットに記事が出ていますので読んでみると良いと思います。
22.
23. 匿名処理班
※2 タイガー・ウッズも復活できるかも
24. 匿名処理班
いいなあこういうの!早く実用化して欲しい
骨で出来るなら歯も出来ると思うんだが…歯の再生医療本当に頼む
25. 匿名処理班
これならジャック・ハンマーも日帰りできる
26. 匿名処理班
フィフスエレメントが現実になるのか