カンブリア
生命進化の不思議 /iStock

 今地球上に生息している多種多様な生物を目の当たりにすると、それらすべてが大きな偶然の結果であるということなど、なかなか想像できるものではない。

 進化には真っ直ぐな一本道であるかのようなイメージがある。しかし実際にはランダムに起こるいくつもの重要な出来事がぴったりのタイミングで生じなければ、今私たちが目にしているようなさまざまな姿形をした生命は誕生しなかった。

 そうした出来事が1つ欠けただけでも、地球の風景は今とはまるで違ったものになっていただろう。以下では、生命の進化の途上で運よく訪れた8つの大規模イベントを見ていこう。
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生命の共通祖先「LUCA」の誕生



Facts Of Evolution: Universal Common Descent

 今日の地球には多種多様な生命が暮らしているが、それらすべてに単一の共通の祖先が存在する。そのことは細菌、古細菌、真核生物の3つのドメインに共通点があることからはっきりと分かる。

 ただし、共通祖先がどのような姿をしていたのかまでは分からない。従来の進化論の知見から言えば、「共通祖先(LUCA)」と呼ばれるそれが、現生生物の中でもっとも単純な生物よりも複雑であるはずがない。

 しかし最近の研究の中には、じつはLUCAがこれまで考えられていたよりもずっと複雑であった可能性があると推測するものもある。なんと現在知られている一部の微生物よりも複雑だったというのだ。

 これについて、そうした微生物はかつて今よりも複雑だったが、それぞれが暮らす環境に適応するうちにそうした複雑さを失ってしまったと説明できるかもしれない。


7. カンブリア爆発



What caused the Cambrian explosion? | The Economist

 複雑な多細胞生物はかなり最近になって登場した。地球の生命の歴史において、生命はほとんどの期間、今私たちが目にしている生物とは似ても似つかない単細胞生物に過ぎなかった。

 そのほとんどは動くこともできず、また生きるために酸素すら必要とせず、かろうじて生きているだけの生体物質の塊とでも言うべきものだった。そうした状況が一変したのが、5億4000万年前のことだ。

 海の中で複雑な多細胞生物が爆発的に増え始めたその出来事のことを「カンブリア爆発」という。それ以前の生命の化石には複雑さのかけらもないのに、その時期を境に単細胞生物は酸素を利用する複雑な生き物へと変貌を遂げた。

 カンブリア爆発のきっかけは不明だ。そのころの証拠は乏しいうえに、信頼性にも欠けるために、永遠に分からない可能性もある。しかし、当時海に含まれる酸素の量が急増したこととの関係が指摘されている。


6. 有性生殖



Asexual and Sexual Reproduction

 「有性生殖」の発達は、進化のどこかの段階で起きる順当なステップに思えるかもしれないが、じつはそのメリットは自明ではない。有性生殖を行うには、オスというコストを支払わねばならないからだ。

 無性生殖では、個体数のほぼ半分を占めるオスが生殖に参加しないために、その2倍の数の遺伝子を着実に子に受け継がせることができる。それを捨ててまで有性生殖に切り替えるだけのメリットを、科学者ははっきり答えることができないでいる。

 このような謎はあるものの、有性生殖はこれまで生命が進化させてきたもっとも重要な特質の1つだ。それは自然選択を通じて世界を形作るという機能を担い、おそらくは今存在するもっとも複雑な生命の進化を促してきた。

 無性生殖でも複雑な進化が起きるために、性なしでは生命はこれほどまで複雑に進化できなかったと断言はできない。だがそれでも、今とは違うものになっていただろうことは間違いない。


5. 大躍進(現代的行動)


ホモサピエンス
gorodenkoff/iStock

 過去数十万年は特にヒトにとってイベントが多い時期だった。今ではほとんど忘れ去られてしまったヒトの歴史の大半は、まったく退屈なものだった。現生人類の祖先は200万年以上暮らしてきたが、その歴史の9割ではこれといって何も起こらなかった。

 ところが6万年ほど前に何かが変わった。これを「大躍進(現代的行動)」という。これを境に、私たちは突如として、しかも急速に道具・言語・政治システム・芸術といったものを編み出し始めた。

 じつはこの時期は、私たちがアフリカを旅立ち、ユーラシア大陸に広まった時期でもある。一説によると、大躍進はアフリカに大規模な旱魃が起こり、ヒトの祖先が新天地を求めることを強いられた結果であるという。この時期、地球が氷河期に向かっていたことを考えれば、確かにあり得ることだろう。


4. 大量絶滅



‘The Great Dying’ Was Our Worst Extinction Ever, And It Could Happen Again

 かつて地球の陸上は恐竜や大型爬虫類によって支配されていた。海だってとんでもなく大きい危険な生物がたくさんいた。そのような危険な世界で、比較的無害だった哺乳類はどうやって生き延び、世に進出することができたのだろうか?

 その答えが「大量絶滅」だ。原因はよく分かっていないが、2億5200万年前のペルム紀末に起きた大量絶滅では、陸生種の7割、海生種の9割以上が死に絶えてしまった。これは生命にとって悲劇的な出来事であった一方、私たちが進化するには必要なことだった。

 幸いにも、大量絶滅を生き残った一握りの種の中に、あらゆる哺乳類の直接の祖先である「キノドン」がおり、それまでの生命が姿を消した一方でチャンスには満ちあふれている地上を受け継いだ。生き残った者たちは、比較的短期間の間に適応を繰り返し、さまざまな姿形を手に入れるよう促された。哺乳類の直接の祖先が登場したのはこの時期のことだ。


3. 真核生物の登場


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真核生物 image by: ja:User:NEON / wikipedia creative commons

 ある進化生物学者に言わせれば、「真核生物」の登場は地球の生命史において最重要イベントであるという。現存するあらゆる生命がLUCAから分岐したように、真核生物はほかの2つのドメイン(細菌と古細菌)から分岐した。

 植物や動物など、今日存在する生命の主要な種が属する真核生物は、細菌と古細菌とはありとあらゆる点で本質的に異なっている。細胞レベルからして違うのだ。そして私たちの体に備わっているさまざまな複雑な機能が可能になったのも、真核生物が登場したからこそだ。


花をつける種子植物の誕生と拡散


種子植物
Ugo Matone/iStock

 こうした生命の決定的瞬間について語るとき、忘れられがちなのが植物だ。だが誇張でもなんでもなく、地球上に存在する多種多様な植物がいなければ、今日目にすることができる生命は存在しなかった。

 生態系を維持してくれるこうした植物は、じつはそのほとんどの期間、現在の姿とは大きく異なっていた。地球の大部分を支配していたのは、花を咲かせることのないシダや針葉樹だったのだ。

 ところが1億3000万年ほど前、どこからともなく「種子植物(顕花植物)」が登場し、勢力を急拡大させた。その結果、種子植物はシダ・針葉樹を圧倒し、今日でのその割合は20対1にまでなっている。

 これが地球の生命にとってきわめて重要だった。種子植物は生態系を維持するという役割にくわえて、動物に食料や栄養源を提供することができたからだ。それがなければ、少なくとも大きな動物が進化することはあり得なかっただろう。


1. 地球に大量の酸素が放出、大酸化イベント


大酸化イベント
MarcelC/iStock

 地球史の半分の期間、意外にもその大気にはほぼ完全に酸素がなかった。酸素で満ちあふれた世界というのは、そう確実に到来するものではなく、24億年前に起きた出来事がなければ、地球上に出現しなかった可能性も十分にあったのだ。

 「大酸化イベント」と呼ばれるそれは、地球の生命にとってはダントツ一番で重要であり、なおかつ謎に包まれた出来事だ。その当時、何らかの原因によって地球の大気に大量の酸素が供給され、その後の進化が可能になる舞台が整った。

 一説によれば、「シアノバクテリア」という副産物として酸素を放出する細菌が、大酸化イベントの立役者だったという。いずれにせよ、これは地球の生命にとっては大転換となる出来事で、それがなければ地球上に生きるほとんどの生命は存在できなかったはずだ。

References:The Most Important Moments for Life on Earth - Toptenz.net/ written by hiroching / edited by parumo
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コメント

1

1. 匿名処理班

  • 2020年06月01日 20:36
  • ID:9YxI.DRF0 #

アノマロカリス!深海に生き延びてないかなぁ。一種類ぐらい生きた化石がいてもいいのに。

2

2. 匿名処理班

  • 2020年06月01日 20:37
  • ID:2kJRFzvR0 #

常に絶滅が基本であり、生き残りは例外

3

3. 匿名処理班

  • 2020年06月01日 20:51
  • ID:NjUKIOFZ0 #

炭素を軸とし、猛毒であるが大量にある酸素を利用し、大きな体を安定させるためにマグネシウム→カルシウムを利用する。
炭素型と簡単に言われるけれど、割と必然性はある。
「有り触れている」と言うことは大事なステータス

4

4. 匿名処理班

  • 2020年06月01日 21:10
  • ID:uaUfFSz10 #

酸素が無いなら無いで酸素を必要としない生物が進化するだけだ
今の状態は奇跡じゃなく地球の変化に適応した必然でしょ

5

5. 匿名処理班

  • 2020年06月01日 21:10
  • ID:Tm..kb0g0 #

植物が根付く「土」の方の都合でその惑星の生態系が決定された、つまり土が繁栄すべき種を選んでいる。っていうストーリーの小説を昔読んだことがあるよ。

6

6. 匿名処理班

  • 2020年06月01日 21:30
  • ID:7n6GYuGn0 #

よくわからないけど、
今自分が生きて、食べることができるのが当たり前じゃないってことだね。
つらいことは沢山あるけど、地球に感謝して頑張って生きよう。

7

7. 匿名処理班

  • 2020年06月01日 21:31
  • ID:sr5ogSgk0 #

生物学者が言ってたな
強い生物が生き残るんじゃない
変化に対応できたものが生き残るんだって
今起きてるコロナ禍さえ、地球規模での時間を見たら些細なものに見えてくる

さあ、これからどんな大規模イベントが起こるかね

8

8. 匿名処理班

  • 2020年06月01日 21:48
  • ID:L1D1CdUr0 #

こういうの丸暗記して女の子にそして最後は君が生まれてきたことだっていいたい

9

9. 匿名処理班

  • 2020年06月01日 23:20
  • ID:VFtcbWDm0 #

生命は簡単に誕生しても真核生物に至るのがすごいと見るなあ。なんにしても、真核生物は古細菌の一派という説が強くなっているんでしょ

10

10. 匿名処理班

  • 2020年06月01日 23:57
  • ID:4H2lKyu20 #

どのイベントもその都度そこに居た生命自身が生き延び繁栄したいって意思から生まれてると考えると割とすんなり納得出来る気がする
けど科学者は何となくじゃ駄目だもんな

11

11. 匿名処理班

  • 2020年06月02日 00:12
  • ID:VdzLl6xe0 #

ダイナミック!

12

12. 匿名処理班

  • 2020年06月02日 00:53
  • ID:kYwVFg520 #

>>4
酸素による大出力がなければ、複雑かつ大型の生物は誕生しなかったろう
今でも微生物止まりだったかもしれん

そういった意味では奇跡の一歩目といえるんじゃないかな

13

13. 匿名処理班

  • 2020年06月02日 01:05
  • ID:vzwWeOsV0 #

ありがとう・・キノドン。僕たちの先祖よ

14

14. 匿名処理班

  • 2020年06月02日 01:50
  • ID:1ba55RXT0 #

エデンに先立つカンブリアヘ。

15

15. 匿名処理班

  • 2020年06月02日 08:26
  • ID:ZsJ3kfHw0 #

全部宇宙人が意図的に起こしたものかもしれない

16

16. 匿名処理班

  • 2020年06月02日 10:26
  • ID:m339stCh0 #

flowering plants は被子植物であって種子植物(顕花植物)とするのは誤訳だろう
針葉樹(conifer)だって種子植物だし

17

17. 匿名処理班

  • 2020年06月02日 10:31
  • ID:73zyZig40 #

大抵の大規模イベントは一時的(数万〜数千万年)な影響終わるのに対して、
酸素の大量供給は今も続いてるからすごい。
おかげでCO2が減って過ごしやすくなったのに、人間が必死で石油燃やして元に戻すという・・・

18

18. 匿名処理班

  • 2020年06月02日 12:31
  • ID:mc4Jbo.10 #

>>17
まさに、人類の手による大量絶滅期に入ったという見方もあるくらいですからね。

19

19. 匿名処理班

  • 2020年06月02日 13:12
  • ID:tTUqwRqo0 #

米ニューヨーク・ロックフェラー大学のマーク・ストークル氏(Mark Stoeckle)と、スイス・バーゼル大学のデビッド・タラー(David Thaler)氏は共同で、アメリカの遺伝子データバンク(GenBank)にある10万種の生物種の DNA から抽出された、500万の遺伝子断片である「DNA バーコード」を徹底的に調査した。
その結果、ほとんどの動物がヒトとほぼ同時期に出現したことを示す証拠を発見。人間を含む現在地球上に存在する生命種のうちの 90%が10万〜20万年前に出現したことが明らかになったという。

進化論とか怪しくなってきました。

20

20. 匿名処理班

  • 2020年06月02日 15:27
  • ID:yBZUVnma0 #

※4
12さんも書いてるけれどそれまでとエネルギー効率が全然違う
動力がマッチレベルからガソリンになったとでも考えればヤベーとわかるはず
(うろ覚えだけど実際は10倍から20倍くらいの効率化だったと思う)

21

21. 匿名処理班

  • 2020年06月02日 16:05
  • ID:0dljU3RI0 #

アノマロカリスすごいすき
ぬいぐるみがほすい

22

22. 匿名処理班

  • 2020年06月02日 16:38
  • ID:CFRi12gQ0 #

※20
人間が知り得る限りで全ての物質で試したのならともかく、酸素ありきで考えると視野が狭まる好例だと思う。
地球が唯一絶対という前提から端を発してるもんだからね。

その酸素で地球を満たしたシアノバクテリアだけど、貴重なバクテリアではなく日本でもその辺の地面で見かける事が出来る。
道端などで乾いた海藻みたいなのが転がってたらそれがそう(イシクラゲ)。

23

23. 匿名処理班

  • 2020年06月02日 20:38
  • ID:jx7YOINO0 #

地球規模でイベントごとに無料ガチャ祭り

24

24. 匿名処理班

  • 2020年06月02日 22:10
  • ID:kYwVFg520 #

>>22
酸素ありきも何も、実際に嫌気性生物の生じるエネルギーは低く、高等生物に達していないという実例はある
一方、より効率的な生物ってシミュレートできてない、実例もないから視野にいれてもあまり意味ないと思うぞ

25

25. 匿名処理班

  • 2020年06月02日 23:21
  • ID:5Gux.VsU0 #

最近はカンブリア爆発ってのはその時期に化石が残るような生き物が出てくるようになっただけで以前から大量に居たなんて話も聞くが

26

26. 匿名処理班

  • 2020年06月02日 23:28
  • ID:YU9oQemJ0 #

※19
その元記事はこれね。記事後半まで読めば、進化論を否定しているわけではないことが論文著者自身の説明で語られているけど、少しわかりにくい。

2018年5月30日AFP
「DNAバーコード」大規模解析、進化の新事実が浮き彫りに
ttps://www.afpbb.com/articles/-/3176567

別の生物学者による解説がここにあるので、まんま引用する。
(ヤバめなサイトですが、この解説自体は至極まっとうです)
ttps://tocana.jp/2018/06/post_17180_entry_2.html

以下引用---
「原論文を読みましたが、DNAバーコーディング技術のバックグラウンドについての記事で、報道内容とは少し違う印象を受けました。現生の種が生じたのが20万年前というよりも、現生の種の遺伝的多様性が生じたのが20万年という話です。たしかにそれなら納得がいきます。その時期に現生のすべての生物は氷期を経験していて、特に10万年から1万年前には最終氷期極大期がありましたから、多くの種はそこで大量に絶滅してボトルネック(遺伝的多様性の急激な減少)を起こしています。今回の研究は、この20万年〜10万年前に生き残った種が現行の生物種の遺伝的多様性の基盤になっているということです。20万年ぐらいではDNA配列が2、3変わるだけですので、遺伝的変異もさほど起こりません。そういう意味では中間種もいないと言えるでしょうね。つまるところ、多くの系統地理学的な研究は今回の研究結果を支持するものであり、進化論には何の影響もありません」
引用終わり---

27

27. 匿名処理班

  • 2020年06月03日 03:33
  • ID:p8SgtIJz0 #

酸素を生み出すシアノバクテリアの活動開始時期が火星の磁場及び大気の喪失期と重なる点にロマンを感じる。第2の火星それは・・・

28

28. 匿名処理班

  • 2020年06月04日 07:21
  • ID:mZQGXnKk0 #

※17
CO2が増えると植物も増えるよ
主に海中の植物プランクトンと藻類で地球上のO2生産もこいつらが主役

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