特定の金属などを超低温にすると電気抵抗がゼロになる超伝導(超電導)現象はさまざまな効果や特性から、幅広い分野に応用される可能性を秘めている。
こうした超伝導の性質を応用して、海外の低温物理学科の学生が作った量子浮揚(関連記事)トラックの動画が話題になっている。しかもこれ、3回ひねりのメビウスの輪状態なのである。
重力から逃れて540度にひねられた磁石性のトラック(走路)を猛スピードでツルツル走る超伝導体の動きがなんだかとっても近未来っぽいんだぜ!
Superconducting Quantum Levitation on a 3π Mobius Strip
低温物理学科の量子浮揚実験が成功
この動画は、米ニューヨークにあるイサカ・カレッジの低温物理学科の学生による実験映像だ。過冷却した超伝導体を3π(パイ)メビウストラックの上に浮揚させるという画期的な試みが成功した。化合物でできた超伝導体には、磁場を排除する「マイスナー効果」と、一部の磁束をとらえる「ピン止め効果」という現象が起きる。そのためその上に磁石を置くと、磁石が浮揚したまま安定するのだ。
image credit:youtube
実験をした学生のコメント
3πメビウストラックで量子浮揚!
磁石でできたトラック上に超伝導体を浮揚させたまま、へりを越えずにトラックの裏を走らせた。しかもこれはただのメビウスの輪じゃなく、超伝導体が540度回転する3回ひねりのトラックなんだ!
トラックは3回ひねりのメビウスの輪
3回ひねりのメビウストラックというのはその名の通り、メビウスの輪のひねりを2回増しした形のトラックだ。動画では以下のような説明がされている。緑と赤の2面の輪、これはへりを越えなければ片方の面には行けない。
image credit:youtube
だが、この輪を切って1回、つまり180度=弧度法でいう1π(パイ)ラジアン分ひねってくっつけ直すと、メビウスの輪(別名:メビウスの帯。数学的には向き付け不可能な曲面)ができる。するとへりを越えずに赤の面にも緑の面にも進むことができる。
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ここで、再度輪を切り、もう1回ひねって2π(360度)にすると、あら不思議!またへりを越えないともう一方の面に行けなくなってしまった。
image credit:youtube
んじゃ、もっとひねったらどうなるのだろう?また輪を切ってもう1回ひねり、合計3回、つまり3π(540度)ひねりの輪にすると、最初のメビウスの輪と同じ、へりを超えずに両面に行けるようになった。
image credit:youtube
その構造を模したのがこの3πメビウストラックというわけだ。
image credit:youtube
なお超伝導体は液体窒素で作ったようだ。
image credit:youtube
いいねえ・・浮いてる浮いてる!これが反重力ってやつ?
image credit:youtube
ちゃんと浮いて走ってるぞぉ〜!
image credit:youtube
表裏一体型のトラックをスルスル走っちゃう超伝導体
ねじれたトラック上を外れることなく高速で滑らかに走る超伝導体。うん、このスピード感とスムーズな走り。このつかず離れずな反重力感が近未来的で素敵やん。image credit:youtube
メイキング動画
The Making of: Superconducting Quantum Levitation on a 3π Mobius Strip
そういえば、イーロンマスクの次世代高速輸送システムも空気抵抗などの課題があるようだが、こういうのを応用したら実現したりしないのだろうか?
ていうかもう、そのうちお子様世代が「パパ!誕生日には3πメビウスの量子浮揚トラックセット欲しいよぅ!」とかねだったりする時代が来たり来なかったりするのかねえ、なんて思う今日このごろだ。
via:geekologie / digg / youtube / laughingsquid / sploidなど / translated by D/ edited by parumo
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コメント
1. 匿名処理班
超伝導体までは無理でも、リニアモーターカーがプラレールとして販売される世の中ですから、何年かしたら、「大人の科学」とかの付録として、「液体窒素で作る、超電導浮遊キット」とかいうものが、作られるかもしれません。
2. 匿名処理班
大人でも欲しい。
3. 匿名処理班
理科の授業でリニアモーターカーの説明に使われそうな感じだな
子どもの興味を唆るところから始めるならやっぱりこうなんというか、
見ててギョッとするようなやつがいいよな
4. 匿名処理班
素材がクッソたかそう
いくらぐらいするんだろう?
5. 匿名処理班
次世代のスロットカーかな。あれも磁石使うし。
ご家庭で液体窒素が用意できるかって言うとなあ。
6. 匿名処理班
猫が喜びそうな軌道とスピード
7. 匿名処理班
F-ZEROにしか見えん
8. 匿名処理班
常温で超電導状態が作れれば、凄いことになるよねぇ。
9. 匿名処理班
リアルF-ZERO
10. 匿名処理班
メイキングの冒頭がかっこよすぎるので載せるべき
The Making of: Superconducting Quantum Levitation on a 3π Möbius Strip
11. 匿名処理班
俺のアバンテなら・・・
12. 匿名処理班
ハンドスピナーの次はハンド量子浮遊トラックブームが来るね。間違いない。
13. 匿名処理班
昔からあった 何を今更???
絶対零度のμは0よ・・・いやむしろ加速かも
だから宇宙は光の速度以上で膨張している
14.
15. 匿名処理班
超伝導体が温まったらどっかすっ飛んでいかない?
16. 匿名処理班
超伝導にしないでも、反発し合う普通の磁石にピン止め効果は生み出せないのかな
17. 匿名処理班
>>15
レールにペタッとくっつく。
18. 匿名処理班
ピン止め効果があるから、横になってもずれないし落ちない
19. 匿名処理班
※11
そのネタわかるやつが何人いることやら^^;
懐かしいなぁ(遠い目
20. 匿名処理班
※8
それなんだよねぇ。
常温に近い低温超電導の実験は成功したりしてるけど、コスト度外視で実用化は目途が立ってないし。
もし常温で超電導を維持できるようになったらノーベル賞ものだと思う。
21. 匿名処理班
二回目の回転、方向あってるか?
それだと一回目の回転を戻しただけに見えるんだが。
22. 匿名処理班
F−ZEROというかWipEoutかな
23. 匿名処理班
こういう時人間って最高だなと思わざるをえない
オラわくわくがとまんねぇぞ
24. 匿名処理班
wipeoutのフェイク動画かと思った
25. 匿名処理班
※13
こんなカッコイイコースはなかったぞ
26. 匿名処理班
物体の動きと逆方向に環を回したら面白そう
27. 匿名処理班
部屋の中を立体サーキットにできるようになったら
その手のジオラマ好きが大喜びしそうだ
そこまでの道のりは遠いんだろうけど、夢が広がるなあ
28. 匿名処理班
※19
じゃあ、僕はトライダガーZMCで。小石は標準装備。
29. 匿名処理班
これは面白い