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 インターネットは世界中の人々の生活にかつてなかったほど大きな影響を与えた。道案内から買い物まで、もはや日常生活はインターネットなしには成り立たないと言っても過言ではない。

 だが同時に、休日にショッピングや猫の写真を楽しんでいる最中、オンラインに暗い領域があることは忘れられがちだ。それが及ぼす力は、その悪意と同じくらい奇妙である。

 海外サイトで、ネットを利用した組織的な犯罪の手口がいくつか公開されていた。

1.ネット上にはびこる殺し屋

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 フェイスブックで殺し屋を雇うのは危険なほど簡単だそうだ。ペルーのエル・コメルシオという新聞はそれを調査するために、フェイスブックでロス・プルポスというグループに連絡を取った。するとレポーターは、たった11,000円程度で迅速な暗殺を保証されたらしい。

 暗殺者を斡旋しているのはロス・プルポスだけではない。フェイスブックにはペルーのトルヒーリョに拠点を置くギャングのアカウントが少なくとも3つは存在する。メンバーはその実績について吹聴し、電話番号まで公開しているという。

 また、フェイスブックなどのソーシャルメディアは、ギャングの宣伝活動やメンバーの募集にも利用されているようだ。警察の推計によれば、一部のギャングは、ネット好きの10代向けに広告を打ち、6ヶ月で40%も構成員を増やしたという。こうしたサイトはギャングに興味のある者なら誰でも容易にアクセスでき、武器の取り扱いや暗殺者のなり方などを閲覧できてしまう。

2. オンラインゲームでのマネーロンダリング

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 2009年に発表されたIMFの推計によれば、世界のGDPの2〜5%が犯罪によるものだという。こうした違法行為による収入は、それを表の世界で使う前にきちんと洗浄しておく必要がある。そして、MMORPGを代表とするオンラインゲームがその抜け道になる危険があるそうだ。

 『ワールド・オブ・ウォークラフト』や『セカンドライフ』などのオンラインゲームには、ゲーム内のアイテムや通貨を購入するための、本物のお金を使った決済システムが搭載されている。裏金でゲーム内のアイテムを購入し、今度はそれを売却して本物の通貨に変える。ゲーム内取引はほとんど規制されておらず、しかもたやすく国境を越えてしまうため、マネーロンダリングの手段として打ってつけなのだ。

3. サービスとしての犯罪ビジネスモデル

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 ダークネットをご存知だろうか? 特定のチャネルやプロトコルでしかアクセスできない、インターネットの地下世界だ。そこには普通の人間なら夢にも思わない違法なものが飛び交っている。だが、そのダークネットのコンテンツは奇妙な方法でインターネットの領域に漏れ出してくる。それが、欧州サイバー犯罪センターが言う”サービスとしての犯罪(Crime-as-a-Service)”ビジネスモデルだ。

 このモデルは、企業や政府などに大規模攻撃を仕掛けるソフトウェアを作成可能なサイバー犯罪者がダークネットに大勢潜んでいる、という見解に基づいたものだ。そこでは攻撃用ソフトウェアを作成するだけでなく、新参者への販売も行われている。つまり、サイバー犯罪の初心者であってもすぐに混乱を引き起こせるツールを入手できるということだ。

 これは組織犯罪の世界に新しい構造が出来上がったということでもあり、そこで個人のサイバー犯罪者がソフトウェアやスキームを共有し、まるで傭兵のように雇用されるのを待っている。こうした取引には国境を簡単に越えられる暗号通貨が利用されるという。欧州刑事警察機構によれば、麻薬売買から人身売買まで、ダークネットの犯罪行為においてはやがてビットコインが主要通貨になるとのことだ。

4. RICO法とCarder.su

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 2014年、アメリカ司法省によってオンラインの犯罪者に対する判例が作られた。RICO法とは、特定の違法行為によって不正利益を得る”ラケッティア活動”によって組織犯罪に従事する企業を規制する法律である。このRICO法が、世界的なウェブサイトCarder.suに適用されたのだ。

 Carder.suは、盗難クレジットカード番号を取引可能なサイトであり、かつては2,000円程度で犯罪組織が背後にいるこの場所から他人のカード番号を購入できた。

 被告人は、彼らがオンラインネットワークの一部でしかなく、他人の素性など何も知らないことを理由に、RICO法の適用対象とはならないと主張した。しかし、検察はロシアの管理人が組織全体を監督し、従来型犯罪組織のボスのように賞罰を与えていたことを指摘している。裁判では、9人のアメリカ人が有罪判決を受け、懲役20年を宣告された。だが、アメリカ国外に住む者も多く、ネットワーク全体を潰すのは難しいと言われている。

5. オンライン賭博

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 賭博は常に激論を呼ぶ問題だが、インターネットは注目試合に手軽にお金を賭けられる場所を提供している。だが、そうしたサイトの背後にどのような組織や人物が存在するのか容易には知れない。

 2015年のフロイド・メイウェザー・ジュニア対マニー・パッキャオのボクシングの試合を例に挙げよう。このラスベガスの試合には100億から120億円ほどが賭けられたと言われているが、アメリカで行われる違法スポーツ賭博の全体に比べれば些細なものでしかない。アメリカ市場だけで、毎年、実に100兆円近い金額が動いているのだ。その多くがウェブサイトを通して賭けられていると推測されており、多くがアジアで運営されている。

 もちろんアジアだけではなく、そうしたサイトは少ないリスクで一攫千金を狙う人間によって、イタリアから中東まで世界中に開設されており、その収益は他の違法行為を行う組織の懐へ入っていく。すなわち、悪気もなく賭けたお金が犯罪組織の資金源になっている可能性があるということだ。

6. ランサムウェア

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 現代人の生活がパソコンやスマートフォン依存するようになったことで、犯罪組織は人質を誘拐しなくても身代金を要求できるようになった。犯罪者はただコンピューターにウイルスを感染させるだけでいい。つまりコンピューターを人質にとるのだ。

 これはランサムウェアと呼ばれるもので、メールやネットを通じて感染する。コンピューターは非公開キーで暗号化され使用できなくなってしまい、その解除と引き換えに身代金が要求される。2012年、シマンテック社が攻撃者のビットコインアドレスを追跡した結果、被害者1名につき最大50,000円程度を要求し、1日に340万円もの利益を上げていた。この調査はあくまで2つのビットコインアドレスのみを対象としたものであり、実際の被害額はそれを大きく上回るはずだ。

7. DDoS攻撃

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 DDoS攻撃とは、分散サービス妨害(Distributed Denial of Service)攻撃のことである。アメリカで増加中の攻撃であり、些細な被害しかもたらさないこともあるが、より大きな犯罪の隠れ蓑になっていることもある。攻撃は比較的シンプルで、コンピューターシステムに膨大な量の情報を送り込み、クラッシュを誘発する。企業にとっては、サーバーがダウンすれば、オンラインの決済システムが利用できなくなるなど、様々な障害が生じる。

 2012年12月24日、サンフランシスコのバンク・オブ・ザ・ウェストも大規模なDDoS攻撃に見舞われている。62人が不本意にもハッキングされた口座からの送金に巻き込まれるという大規模なもので、銀行がシステム復旧に追われている間におよそ9,000万円が盗まれてしまった。

8. DDoS攻撃による情報盗難

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 DDoS攻撃は犯罪組織の不正送金の隠れ蓑にされるだけではなく、システム内の様々な活動を見えなくしてしまう。シマンテック社によれば、世界の被害総額は年間11兆円にも達しており、着実に増加を続けているという。その対象は現金だけでなく、時には情報も狙われる。

 2015年8月にDDoS攻撃に見舞われたカーフォン・ウェアハウス社からは、システムが利用できなくなっている間に、240万人の顧客データが盗難された。こうした情報にはクレジットカード番号も含まれている。また、2013年にはある企業の1,000億円規模の研究データが被害にあったこともある。こうした攻撃の対象となるのはハイテク企業で、多くが中国の犯罪組織によって実施されているという。

9. シルクロードとオンライン・ブラックマーケット

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 オンラインショッピングで有名なのはアマゾンやeBayだが、2011年にはシルクロードというeBayにそっくりなサイトが登場した。だが、そこで扱うものは一味違っている。パースート・マガジンによれば、ユーザー名、パスワード、決済情報を入力すると、驚くほど大量の違法な製品を閲覧できるようになるという。

 伝えられるところによれば、シルクロードは違法行為(暗殺依頼、盗難クレジットカード番号、チャイルドポルノ、武器など)の販売を禁止したという。しかし、決済通貨にビットコインを選ぶと、たちまち薬物取引の場と化してしまう。2013年にはFBIによって検挙され、4億円相当のビットコインが押収されたそうだ。

 シルクロードはオンライン・ブラックマーケットの氷山の一角でしかなく、例えば2014年初頭に登場したエボリューションでは、およそ15,000点もの違法な製品が扱われており、それに対する規制も行われていない。また、シルクロードもシルクロード2としてリニューアルされている。

10. オンライン野生動物取引

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 国際動物福祉基金(IFAW)が2008年に行った調査では、地下サイトでは薬物や武器の他にも、象牙などの野生動物の取引が横行していることが明らかとなった。2013年、国連犯罪防止刑事司法委員会は、こうしたオンラインの野生動物取引を最も深刻な組織犯罪に指定している。

 ブラックマーケットでは大型ネコ科動物の生皮や亀の甲羅からサメのヒレやセンザンコウまで、様々なものが扱われており、オンライン取引が手軽になったことで、世界中の動物たちが危険に曝されるようになった。

 一方で、動物で家を飾りたい者や伝統的な薬の材料を求める者、あるいは珍しい動物をペットに飼いたい者など、増加を続ける野生動物への需要は、密猟が行われる地域に波及効果を及ぼしている。違法な武器取引が増加し、汚職や不正行為、時にはテロリズムを助長しているのだ。その規模は深刻であり、過去10年間において、35ヶ国の公園で1,000人のレンジャーが命を落としている。

via:urbanghostsmedia・translated hiroching

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コメント

1

1. 匿名処理班

  • 2015年12月04日 21:32
  • ID:JYaNbNAK0 #

「げに恐ろしい」って何処かの方言ですか?

2

2. 匿名処理班

  • 2015年12月04日 21:39
  • ID:TKvH2Hif0 #

げにってのは本当って意味の日本語
方言じゃねーよ

3

3. 匿名処理班

  • 2015年12月04日 22:36
  • ID:5IshmRCs0 #

日本では、こういうネット犯罪みたいな新しい事例に対する法整備とか規制とかが、特に遅れ勝ちだからね。自分で気を付けるしかないのかな?と暗い気持ちになってしまう。気を付けると言っても、全てを把握はできないだろうし、自覚させてもらえない犯罪も有るんだから、防ぎ様がないじゃないか?と不満をぶちまけてみる。

4

4. 匿名処理班

  • 2015年12月04日 22:53
  • ID:0MjdKqg30 #

マネーロンダリングの画像は大体あってる

5

5. 匿名処理班

  • 2015年12月05日 01:16
  • ID:AUzWTegQ0 #

後頭部にバーコードが入った殺し屋を雇えるのか。なんて心強いんだ。

6

6. 匿名処理班

  • 2015年12月05日 01:48
  • ID:PpqdwMsl0 #

タブレット落としたばかりでトホホなオレが通りますよ
アカウント1つで全部同期できるのは便利だったけど落としたときの精神的ダメージは図り無いな(どこからどこまでが紐づいてるんだか訳わからんわ)
ピーガーってアナログで通信してたときには無かった悩み
ビットコインはこれから来るだろうね
そういう人たちにとってあれほど便利な通貨は無い

7

7. 匿名処理班

  • 2015年12月05日 02:31
  • ID:Wve10COq0 #

神様はなぜ、欲の塊達をお作りになったのか?

8

8. 匿名処理班

  • 2015年12月05日 04:46
  • ID:O0iyc8Eg0 #

実に恐ろしい

9

9. 匿名処理班

  • 2015年12月05日 05:38
  • ID:P.Hdn8ky0 #

警察の生活安全課と犯罪者が繋がっている場合
被害者が犯罪者にされる

10

10. 匿名処理班

  • 2015年12月05日 06:54
  • ID:7bJP0ZaX0 #

犯罪組織ってアノニマスだけ有名って訳じゃなかったのか

11

11. 匿名処理班

  • 2015年12月05日 11:31
  • ID:ojY.FN8S0 #

世界の終わりが来たらこういう犯罪者どもがなんとかしてくれると思ってしまう

12

12. 匿名処理班

  • 2015年12月05日 11:54
  • ID:VrSrEfHt0 #

ダークネット…一体何物なんだ…

13

13. 匿名処理班

  • 2015年12月05日 12:56
  • ID:8MsVmQWN0 #

悪意に満ちた正義、鬼女ネットワークが無いね

14

14. 匿名処理班

  • 2015年12月05日 14:02
  • ID:2p3QgOuN0 #

あれ正義というか扇動されてるだけじゃないの

15

15. 匿名処理班

  • 2015年12月06日 16:16
  • ID:IkJZs3Ge0 #

どこからが犯罪行為か、っていう境目の自覚が曖昧になるからこういう事に片足どころか胸まで簡単に浸かる輩が出てくる。気軽に法を犯しすぎ。

16

16. 匿名処理班

  • 2017年02月28日 14:45
  • ID:Iy5SIwt40 #

後半は常識レベルだったが、前半の底知れぬ闇の深さは少し驚いた

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