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 アーサー・コナン・ドイル(1859年5月22日 – 1930年7月7日、享年71歳)は、『シャーロック・ホームズ』シリーズの著者として知られ、現代のミステリ作品の礎を築いた人物である。だがむしろ本人は、心霊主義に関する本で後世に名を残したがっていたが、それは実現しなかったようだ。

 最近になって英国図書館では、ドイルの生前と死後の肉声を録音したと言われているものを公開した。
 ドイルの死後、80年以上たっても、未だに経験主義文学の作者と心霊主義というものがなかなか結びつかない。心霊主義は、19世紀半ばアメリカで生まれた。皮肉なことに、それは市民生活の中で科学が果たす役割が増したせいだとする学者もいる。
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 人々は、死後の世界の具体的な証拠を求めた。同時に、電信装置の発明に、アメリカ国民は驚き半ば怖れをなしていた。抜け目ない降霊術師たちは、この技術の普及をうまく利用して、人々の信心をあおったのだ。1857年に、ある降霊術師が次のようなことを書いている。
 人間の自由意思というものが、エーテルや電気を通じて、心の動揺を感じる対象に影響を与え、意志や考えを向けられる霊と、確かに会うことができるのかもしれない。霊が我々と同じように知的で自由な意思をもっていて、同じチャネルの中にいれば、返事を返してくれるだろう。そのチャネルは、この世界の創造者の崇高な発明のひとつで、霊と我々を隔てている時間や空間を取っ払ってくれる。これは、電信電気の発明以前では、不可能なことだっただろう。
 さらに、人々を心霊主義にかりたてたのは、戦争だった。まず、南北戦争後、亡くなった愛すると交信しようと、人々は霊媒師に助けを求めた。それから、第一次大戦後も同じことが起こった。1880年代以降、ドイルは心霊現象にのめりこんだが、降霊会に参加して、フランスで負傷して、1917年に肺炎で亡くなった息子キングズリーとコンタクトしたと信じたことから決定的となった。
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 60冊以上あるドイルの著書のうち、20冊は心霊主義に関するもので、その中には1924年の『心霊学史』という二巻の大著もある。もっとも興味深い箇所は、死後の世界を信じてはいたが、心霊ブームにつけこんだ、エセ霊媒師の嘘を暴露することにも精力を注いだ、ハリー・フーディーニとの友情をはぐくんだ部分だ。

 ドイルがフーティーニをプライベートな降霊会に誘い、ドイルの妻ジーンがフーディーニの母親と接触したと言い張ったときに、その友情は苦い終わりを告げた。ユダヤ教のラビの妻だった、フーディーニの母親が書いたというメッセージが、十字架だったといういんちきに、フーディーニはひどく腹をたてたのだ。
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 英国図書館のウェブサイトでは、1930年5月14日、死の二か月前に録音されたという、心霊学について語るドイルの貴重な声を聞くことができる。以下の動画はその音声である。
Voices from the Beyond - Sir Arthur Conan Doyle 1934 - Seance recording

 冒頭は以下のとおりだ。
心霊学からなにを得られるのか?とよく訊かれるが、まず、死の恐怖から完全に解放されること。次に、愛する故人とつながることができること。わざわざ、彼らに戻って来てくれと頼む必要はなく、わたしたちはただ、これまでの経験から得た条件をお膳立てしてやればいい。そうすれば、彼らが来たいときにこちらの世界に来られるのだ。主導権はいつでも彼らのほうにある。
 ドイルの死後、なにがあったのか、英国図書館は次のように記録している。

 1930年7月、コナン・ドイル氏の死後一週間たって、彼の霊とコンタクトするという降霊会がロイヤル・アルバート・ホールで行われ、多くの人々が集まった。4年後の1934年4月28日、ニューボンド・ストリートにあるアイオリアン・ホールで、ノア・ゼルディンによって降霊会が開かれ、多くが締め出される中、560人の聴衆が集まった。音声が録音された初めての大きな集会で、ドイルは、あちらの世界から声を発してきた44人のうちのひとりだった。

ノア・ゼルディンは、帝政ロシアからロンドンに逃れてきて、オックスフォード・ストリートで毛皮職人として生活していた。大火事で妻バーサを亡くし、仕事も立ち行かなくなって、降霊会ビジネスにたずさわるようになった。亡くなった妻とのコンタクトに成功したと信じていたようだ。
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コナン・ドイルの心霊写真

 アイオリアン・ホールでの降霊会は、26枚のアセテート盤レコードに録音された。そのまま67年間、トランクの中に埋もれていたが、2001年に息子のダン・ゼルディンによって発見された。録音を聞くと、ドイルの霊のものとされている声はこう言っている。

“我が息子たちと、我が良き妻ジーンを頼む”
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via:io9・原文翻訳:konohazuku

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コメント

1

1. 匿名処理班

  • 2014年05月25日 21:13
  • ID:s9zYDLRk0 #

エジソンと良い、ドイルと良い、何故聡明な頭脳を持っている人間ほど
心霊学にのめりこむのか。
ドイルはあんな見え見えの妖精写真に引っ掛かったし。
フーディニーも本当の霊能力者を探したかったという話もあるしなあ。

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2. 匿名処理班

  • 2014年05月25日 22:01
  • ID:Yt7KdaD40 #

子供の頃からホームズシリーズやロストワールドを読んできた自分としてはドイルの肉声が聞けてうれしい。

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3. 匿名処理班

  • 2014年05月25日 22:37
  • ID:mHB9D5UG0 #

一番下の写真、
「バ、バカモン!ワシが本物じゃ!」

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4. 匿名処理班

  • 2014年05月25日 23:07
  • ID:6CeD45H50 #

とりあえず逆再生してみよう

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5. 匿名処理班

  • 2014年05月25日 23:50
  • ID:orHmNqUD0 #

コナン・ドイルは日本では「シャーロックホームズ」の原作者として有名だが、その晩年がトンデモ系だったことはあまり知られていない。うさんくさい妖精写真にお墨付きを与えたり・・・・。

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6. 匿名処理班

  • 2014年05月26日 03:21
  • ID:Ara.UyFi0 #

精神的に追い詰められた結果、オカルトな物にハマっていったんだろう
自分が嫌ってるキャラクターを主役にして延々書かざるを得なくなり、しかもそれが代表作って言われたらひねくれるのもしょうがない
オカルト関係って0か100だから、他のモノを信じてたら、明らかに偽物だろうと言うものでも、本物って見方しか出来なくなるんだよねぇ

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7. 匿名処理班

  • 2014年05月26日 12:08
  • ID:9OnkesRs0 #

ドイルは子どもは嘘をつかないと信じていた
否定すれば夢を奪うだけでいいことはないから本物といった
と聞いたことあるけどあれは違うの?

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8. 匿名処理班

  • 2014年05月26日 14:31
  • ID:VXMj8xoF0 #

いつも思うが生前じゃなくて死前の方が合理的だと思う。生前生後死前死後

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9. 匿名処理班

  • 2014年05月26日 15:10
  • ID:vC6pGUMx0 #

ドイルが心霊にハマってたってのは有名な話だけど
当時は科学(的なもの)とオカルト(的なもの)がそれほど分化してなかったのも大きいだろ
現在でもまだ血液型占いとかエセ科学とか信じてる人が大勢居るぐらいだし
あんまり変わってないような気もするけど

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10. 匿名処理班

  • 2014年05月27日 20:39
  • ID:U94pWEvI0 #

ドイルの場合、元医者だってのも関連してるのかもね。先進国ですらつい100年くらい前までは医療とまじないが同一線上にあったんだからさ。
21世紀の現在でもカルトにハマってる医者は多いでしょ?天皇陛下の心臓手術をした某ゴッドハンド氏だって創価学会だしなw

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11. Fish

  • 2014年05月28日 22:49
  • ID:01vaw0HN0 #

先頭にある画像(手が円を組んでいるやつ)の詳細を知りたいのですがわかる人います?

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12. 匿名処理班

  • 2014年05月30日 15:56
  • ID:nodeNR0H0 #

未知のものに惹かれるような人だからこそ魅力的な物語が作れたんだろう

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13. 匿名処理班

  • 2014年09月13日 19:21
  • ID:Ui6rJs8e0 #

てか下から二番目の画像の右にマリリンモンロー風な女のドアップ顔写ってるよね?
気のせい?どうでもいい?ちょーこわいんですけど

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14. 匿名処理班

  • 2017年03月07日 10:48
  • ID:AlEZZzhc0 #

ドイルはもともとオカルト系が好きだったのよ。初期の作品にもオカルト全開のやつがある。

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15. 匿名処理班

  • 2017年03月08日 21:53
  • ID:G4m2uCSl0 #

※6
君は実に視野も心も狭いな。
まさに“オカルトの闇”に囚われた愚か者だよ。

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