
干ばつで傷んだ木は、固有の音を出すそうだ。その悲鳴を聞き取り、助けるための手掛かりが見つかったという。フランスの研究チームは、乾燥ストレスを受けた木の内部で発生する泡から超音波をとらえることに成功した。
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フランス、グルノーブル大学の物理学者アレクサンドル・ポノマレンコの研究チームは、木がどのように水を取り込んでいるのかに着目した。木部の導管と呼ぶ特殊な管の束が、水分子の引力、水と植物細胞の引力を利用し、液体を最上部の枝葉まで届ける役目を担っている。
導管は長いストローのようなもので、地面から水を吸い上げるが、地中の干ばつで水分が不足すると、強く吸い上げなければならないため負圧が上昇、導管部が破壊されて水に溶けていた空気が木部で発泡し、水の流れを妨げてしまう。 これは、キャビテーションと呼ばれる、液体の流れの中で圧力差により短時間に泡の発生と消滅が起きる物理現象だ。
木はある程度までは耐えられるが、限度を超えると命取りになりかねない。科学者や森林の管理者は、キャビテーションの大量発生を把握したいと考えている。
キャビテーションによって発生する音をマイクで拾うアイデアは数十年前からあった。ただし、内部をのぞくことができないので、音の発生源の特定には至っていなかった。木がきしむ音や壊れる音かもしれないし、木部細胞が崩壊する音かもしれない。

この問題の答えを探るため、ポノマレンコ氏のチームは1つの実験を行った。まず、薄くスライスした松の木を液体で満たされたジェルカプセルに入れ、生木の内部と同じ条件を作る。
次に、カプセル内の水を蒸発させ干ばつを再現。松の木がキャビテーションを始めると、泡が形成される様子を撮影し、同時にマイクで録音した。
マイクが拾った超音波の約半分がキャビテーション関連で、残りは泡が近くの細胞に侵入する音などだった。最大の成果は、現象ごとの音のパターンを把握できたことだという。
ポノマレンコ氏らはこれらのパターンを実際の生木の音と比較すれば、発生源の現象を特定できると考えている。

ポノマレンコ氏によれば、今回の研究成果は、乾燥ストレスをマイクで診断できる携帯端末につながる可能性があるという。 いずれ、枯れかけた木に急いで給水するタイミングがわかるようになるかもしれないと、ポノマレンコ氏は言い添えている。同氏はメリーランド州ボルチモアで3月に開催された、アメリカ物理学会(APS)の会合で研究成果を発表した。
2012年秋に「Nature」誌で発表されたある研究によれば、南アメリカの熱帯雨林からアメリカ西部の乾いた森林地帯まで、あらゆる場所の樹木が既に“危機に瀕している”という。つまり、キャビテーションの発生率が限界に近づいているのだ。
今後は、渇きの音をリアルタイムで観測する装置を樹木に取り付けて、必要なタイミングで自動給水するなど、早期対応の態勢を整える必要があるとポノマレンコ氏は指摘している。

via:nationalgeographic
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コメント
1. 匿名処理班
木の声(音)を聞く。木も生物だと認識する記事。
2. 匿名処理班
すごく、ひどいこと言ってるようなんだけど。
人だけじゃなくて自然のための募金とかも増やせばいいのに、
3. 気のせい
ききぃっっ!!
4. はぶ
同じ様な話をドキュメンタリー番組で観た。植物から持ち主の携帯に水を催促するメールが届く、みたいな内容。無関係かも知れないけど、タピオカ入りドリンクのストローにタピオカが詰まって一瞬呼吸困難になる現象を思い出した...
5. 匿名処理班
木だけにキーキー言うとかは無しで(−−)
ちゃんとした保全活動して欲しい
でも日本は自然に恵まれすぎで
危機感をあまり感じないんだよな、これが
いい事なのか悪い事なのか・・・・・・
6. 匿名処理班
ひょっとしたら、その超音波を聞きつけて水分を運んでくれる鳥類か虫なんかが遠い昔にいたのかもね
7. 匿名処理班
世界的に、これからの人類が直面する最大の困難は、干ばつ、水不足だろうな
日本は恵まれすぎてるせいか実感が沸かないけど
8. 匿名処理班
ロアルド・ダールの「音響捕獲機」を思い出した
9. 匿名処理班
なんか違う
木の意思(悲鳴)を捉えるというより、自然現象の分類をしただけでは?
干ばつなんて見りゃ分かるんだから、センサーやら取り付ける前に水やれよって思う
勿論枯れる前には間に合うんだろうけど、本来悲鳴を上げてからじゃ遅いと思うんだが…
木のメール云々より自動給水装置と土中水分センサー設置で十分な話
「目的のためには手段を選ばず、手段のために目的を忘れる」タイプかな(笑